
ぐびり。甘い
うーむ。このページの選者もさるもの。よくよく練っている。
また変わった風体なワインが送られてきた。茶色の瓶に透けて見えるのは、明らかに白ワインである。しかし瓶の首が他とは違う。
普通のボトルは、首がまっすぐだが、この瓶は、モルトウイスキーのボトルのように首がくびれ、首元がふっくらと膨らんでいる。
モルト瓶のデザインは、ポットスティルの形を真似たとか、重厚感を出すために、あのデザインになったという話を聞いたことがあるが、このワインも産地か樽が関係するのだろうか。あるいはポートワインの瓶にも似ているので、そちらか。
ともかく注いでみよう。おおっ。白は白だが、流れ出した液体は茶色である。色の淡いウイスキーといった色合いで、注いだだけでシェリーのような香りが漂っている。
いや鼻を近づければ、ウイスキーのような香りもする。ポートのような香りもする。
いかにも選者が、「どうこれわかる? 今までとは違うよ」と、得意げな笑いを浮かべていそうなワインである。
ぐびり。甘い。太い酸味に支えられた甘いが、舌にとろりと包み込む。
香ばしく、甘みの切れはいい。しかし思ったのは、これ1本一人で飲めるのかしらという不安である。甘味に品はあるものの、これが続くと飽きるのではないか。最後に辟易して、もう原稿なんてどうでもいいと、自暴自棄になってしまいはしないか、という不安である。
用意したつまみは、パルミジャーノ・レッジャーノ、ゴルゴンゾーラ・ピカンテ、焼いたカチョカバロ、白カビサラミ、蒸した鶏胸肉である。
甘いワインにこれらがどう応えるのか。不安だけど、楽しいぞ。まずはパルミジャーノ。塩気が甘みに溶け込んで、こいつはいい。
恐らく、コンテ・エキストラや、ヴァシュラン・モンドール辺りでも合うのではないだろうか。塩分が甘味と出合って、滑らかに消えていく。ゆったりとした時間感覚がいい。
ならゴルゴンゾーラも合うハズと試してみたが、チーズの質にもよるかもしれないが、ピカンテのぴりっとした刺激が際立ちすぎてしまう。
ふと思い立ち、台所にあった天山干しブドウをチーズと合わせてみた。こいつはいい。ブドウの甘酸味が、良き仲介者となってワインと引き合わせてくる。
もっとも、干しブドウとこのワインだけをやると、止まらなくなるけどね。
鶏胸肉はワインが勝ってしまう。ワインを少し口に含み、それから鶏肉を噛むようにすると、淡い肉の味に色気がでる。これは口に入れるワインの量を、極少量にすることが要である。