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Aussie Way~豪に入れば豪に従う~

アデレードヒルズのパイオニア

オーストラリアワインのコンサルタントKisa Moto さんは、アデレードがある南オーストラリア州と、メルボルンがあるヴィクトリア州へと出張。ピノ・ノワールを愛するKisa さんが出会ったオーストラリアのグラン・クリュとは?

オーストラリア最大の産地へ

「オーストラリアワイン=バロッサヴァレーのシラーズ」は、定番の方程式であろう。次に南オーストラリア州のワイン産地の中で思いつくとすると、クレアヴァレーやイーデンヴァレー、アデレードヒルズ、マクラーレンヴェール、カンガルー島であろうか。ワイン産地があちこちに広がっている。さすがは、オーストラリア最大のワイン産地だ。

南オーストラリア州のワイン生産量は、オーストラリア全体の半分以上を占めている。私が驚いたのは、アデレード市内からの距離である。首都アデレードを中心に東西南北にワイン産地が広がる。アデレード市内からどの産地へも日帰りが苦にならない、1時間ほどあれば車でビューンと行けちゃうのだ。

アデレードヒルズ

アデレード郊外から少し内陸へ入ったバーンサイドというエリアに宿を構え、数日に渡り南オーストラリア州にあるワイン産地を網羅してみた。

滞在地から車で5分ほどの場所に、かの有名なペンフォールズがあるではないか。

「ワインはもちろんの事ながら、ペンフォールズのカフェテリアで飲めるコーヒーも美味しいのよ。」と地元の方が教えてくれた。ペンフォールズの敷地内に「Magill Estate Kitchen」が併設されており朝9時〜夕方3時頃まで、コーヒー・ワイン・カクテルと共に美味しいお料理が頂けるのだ。

オーストラリアの高級ワインを代表するペンフォールズ

そのペンフォールズの敷地内にある「Magill Estate Kitchen」

ワイン愛好家なら、一度は訪れてみたいワイナリーである。ペンフォールズでは、食事を楽しむのもおすすめ。

そして、私が次に向かったのはアデレードヒルズ。バーンサイドから車で15分もかからなかった。日本と真逆の季節であるオーストラリア。私が、ここを訪れたのは7月初旬。時は、冬真っ
盛り。車内の暖房を効かせ、アデレードヒルズへ向かったものの、アデレードヒルズエリアに入った途端、外気温がグッと下がったのを車内の足元で感じられた。

走行距離で言うとたった15㎞ほどの違いにも関わらず、気温の変化が著しい。標高の高いアデレードヒルズは、クールクライメイト産地である。その涼しい気候を活かし、ソーヴィニヨン・ブラン やシャルドネ、ピノ・ノワールなどが盛んに栽培されている。アデレードヒルズには、全部で60軒ほどのワイナリーがあり1日で全部回るのは難しい。数軒訪れた中で、最も印象に残ったワイナリーについてお話したい。

アシュトン・ヒルズ

「ピノ・ノワールが飲みたいなら、ピカデリー・ヴァレーのアシュトン・ヒルズを尋ねてごらん」

アデレードヒルズのワイナリーを転々と回っているとワイナリーのスタッフが口を揃えてそう言った。詳しく聞くと、アシュトン・ヒルズの創設者ステファン・ジョージ氏は、アデレードヒルズをワイン産地として確立させたパイオニアだそうだ。

リンゴやチェリーが盛んに育てられていたピカデリー・ヴァレー。「リンゴやチェリーがよく育つ場所は、ヨーロッパスタイルのワインを醸造するに最適だ」とステファン氏は、創設当時友人に話していたという。今からおよそ40年前にステファン氏によってピカデリー・ヴァレーに植えられたピノ・ノワールは、「アデレードヒルズ究極のピノ・ノワール」として名を馳せている。

アデレードヒルズ究極のピノ・ノワール

アシュトン・ヒルズの創設者ステファン・ジョージ氏

アデレードヒルズの中で最も標高が高いとされるピカデリー・ヴァレー。年間降雨量は、南オーストラリア州の他のワイン産地の2倍近くある。つまりここは南オーストラリア州のワイン産地の中で最も寒くて湿った場所である。この気候環境こそが、ブドウに素晴らしい香りを与え、線が細くエレガントなスタイルのピノ・ノワールを生み出すのだと言う。

ワイナリーに到着し、彼のピノ・ノワールを一口頂いた瞬間にブルゴーニュのピノ・ノワールが頭によぎった。

従来の、果実味溢れるチャーミングなオーストラリアらしいピノ・ノワールとは少し違って、大人びたエレガントで洗練されたブルゴーニュスタイルのピノ・ノワールを感じたのだ。私は、オーストラリアのピノもフランスのピノも好きだ。オーストラリアで育ち醸造されたピノ・ノワールからブルゴーニュの味わいを感じられるとするとそれは大変面白く、ワイン好き、もっと言えばピノ・ノワール愛好家の心をくすぐるのではないだろうか。

オーストラリアワイン評論家最高権威者であるジェームス・ハリデーも、「ステファン氏によって構築されたピカデリー・ヴァレーは、アデレードヒルズのグラン・クリュと呼べるであろう」と賞賛している。

今回の私の旅のハイライトとなった、究極のピノ・ノワール。ブルゴーニュピノ・ノワールファンに飲んでみてもらいたいワインである。

アシュトンヒルズ
ピノ・ノワール エステート 2018


複数のピノ・ノワールをリリースしているアシュトン・ヒルズ。写真のエステートは、3ha の自社畑のブドウを使う。一部全房発酵あり

この記事を書いた人

Kisa Moto
Kisa Moto
2015年にオーストラリアへ移住。WSET WineEducationにてワインを学び、現地でソムリエを経験。WINE LISTのオーストラリア現地スタッフとしての他、ワインコンサルタントとしても活躍。毎月パース市内にて、ワイン教室を開催。
Facebook: Kisaki Moto instagram: kisakimoto

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