南半球に位置し、日本とは季節が真逆のオーストラリアでは、猛暑の夏が終わり、冬を迎えようとしている。そこで、これから夏を迎える日本に、オーストラリアで今年の夏に流行ったワインをご紹介。
Aussie Way~豪に入れば豪に従う~
今年の夏ワインを南半球から占う
トレンドの時代
オーストラリアワインというと、一筋縄ではいかないぞ!という声がどこからか聞こえてくる。
トレンドに非常に敏感で、新しい流行りを生み出そうとするワインの造り手がいる一方、創業当時からブレずに独自のスタイルを貫く生産者もいるし、正統派で勝負する造り手もいる。
今回は、トレンドの話をしよう。私は、これについては日本の今の日本酒のようなイメージをもっている。
というのは、ワイナリーの経営も2代目、3代目と若い世代へ受け継がれ、はたまた若者が新たにワイナリーを始めるケースも増えてきたからだ。こうなると、トレンドに敏感な若者やチャレンジ精神の旺盛な造り手によって、どんどん新しいスタイルのワインが誕生しているのだ。
Chilled Red
今年の夏、オーストラリアでは、明らかに新しい「流行り」を見せたワインがあった。それは、Chilled Redと呼ばれるもの。
私が日本でワインを勉強していたころは、赤ワインを冷蔵庫で冷やすなんてご法度であった。冷えた赤ワインや温度管理の間違った状態でワインを提供された時には、そのワインへの申し訳ない気持ちと同時に、とてもがっかりしたのを覚えている。
ところが、このChilled Redと呼ばれるカテゴリの赤ワインは、冷蔵庫でキンキンに冷えた状態でサーブされるのだ。
一軒のレストランでの話ではない。こじゃれたレストランやバーの行くと頻繁に見かけるようになったワインリストのChilled Redのセクション。スパークリングワイン・白ワイン・ロゼ・赤ワインと並んで「冷やし赤ワイン」と堂々とリスト化されているのである。
ソムリエが入念に、キンキンに冷やしても美味しい赤ワインをセレクトしているだけではないから驚いた。ワイナリーへ行くと、セラードアでは今年造ったチルドレッドを飲んでみるか?と聞かれたのだ。
そう、生産者も赤ワインを造る時に、これはチルドレッドとして飲んでもらおうと醸造しているのだ。恐る恐る飲んでみると、驚きの美味しさと喉を通る心地よさが印象的だった。
真夏には、40度近い猛暑となる私の住む西オーストラリア州では、夏場のキンキンに冷えたスパークリングワインや白ワイン、時にロゼを飲むのは至福の瞬間である。そこに、今年新たに加わったのが赤ワイン。
以前から他国でもガメイやピノノワール、テンプラニーリョなどの品種によっては、冷やし目でも美味しいと言われてきた品種もあろう。造り手の一工夫によって、コテコテの赤ワイン品種であったグルナッシュ・シラーズ・マタロ(通称GSM)やカベルネソーヴィニヨンまでもが、ここに仲間入りしているのだ。
ハンバーガーやBBQでグリルされたお肉とキンキンに冷えた赤ワイン。いつの間にか、ハマってしまっている自分がいた……これこそが、トレンドの力なのだろう。
冷やし赤ワインは日本に届くか?
梅雨明けが待ち遠しく、これから夏本番を迎える日本では、このトレンドが受け入れられるのだろうか?
日本で、今年の夏に楽しまれるワインはどんなワインなのだろう?と思いを馳せる。一度、騙されたと思ってキンキンに冷えた赤ワインを飲んで見てもらいたい。そして、このトレンドは来年のオーストラリアでも続けて愛されるものなのか、または、新しいトレンドにすり替えられてしまうのか。今から楽しみである。
この記事を書いた人
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2015年にオーストラリアへ移住。WSET WineEducationにてワインを学び、現地でソムリエを経験。WINE LISTのオーストラリア現地スタッフとしての他、ワインコンサルタントとしても活躍。毎月パース市内にて、ワイン教室を開催。
Facebook: Kisaki Moto instagram: kisakimoto
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