ワインには、造られた土地の特徴やトレンドが現れる。特にシャルドネは、それがわかりやすい品種ではないだろうか? だから、いまこそ、知ってほしいのがオージーシャルドネだ。
Aussie Way~豪に入れば豪に従う~
いまこそオージーシャルドネを飲んで欲しい!
国土は日本の20倍
広大な面積を誇るオーストラリア。当然ながらそれぞれの産地で多様なワインが造られていて、オーストラリアワインの一言で括るのは難しい。
世界で最も有名な品種と言っても過言ではない「シャルドネ」は、オーストラリアの地でどのような変化を魅せてくれるのだろう?
育てやすい品種としても知られ、醸造によって様々なスタイルに仕上がるシャルドネは、そのスタイルにトレンドが見え隠れする。では、今のトレンドは一体どんなスタイルなのだろうか?
Anything But Chardonnay
ABC。一昔前に、そんな言葉が飛び交った。ワイン愛好家の友人が「僕、ABCだから」と言ってきた。
ソーヴィニヨンブランとセミヨンのブレンドは、頭文字を取ってSBS。何でも略したがるオージーのことだから、これも何かのブレンドの略であろうか?と考えた。ところがこちらは、「シャルドネ以外なら何でも良いよ」を意味する言葉だった。
シャルドネ好きの私にとっては、この品種がそんな扱いをされるなんてと悲しい印象を受けたことを覚えている。
当時、オークチップを入れて醸造する生産者も出てきたほど、オークの香りが全面に出ているシャルドネが流行っていた。その強すぎるオークの香りを毛嫌いするオーストラリア人が多く、このような言葉が誕生したそうだ。
その後、シャルドネのスタイルは大きく変化し、ABCなんて言葉は耳にしなくなった。では、昨今どんなシャルドネが愛されているのだろうか?
オーストラリアのシャルドネの今
オーストラリアは、6つの州と1 つの離島で成り立っている。1つの州を除く全ての場所でワインが造られている。
今回は、それぞれの場所から1本のシャルドネを選び飲み比べてみた。
各州の気候の違いや土壌の違いを楽しみながらのティスティングは、自由に遠出がし難い環境の今だからこそ、より一層ワクワクさせてくれる。
旅気分で、その土地に想いを馳せながらワインを飲むって、何だか楽しい。特に印象に残ったのは、ヤラヴァレーの新星ワイナリー「Pacha Mama」二人の女性醸造家が率いるワイナリーだ。
母でありワイン醸造家であり友人同士の彼女らが造り出すワインは、比較的敷居の高いブティックワイナリーが多いヤラヴァレーで、コスパに優れたカジュアルなワインを展開している。
世界各国で醸造の経験を積み、その上シェフというバックグラウンドを持つ彼女らが造り出すワインは、とにかく品質が良く美味しい。母として、彼女らが手頃な価格でも食卓に並べて恥じない最高のワインを家族や友人と楽しむことが出来たら……と造り上げるワインなのだ。
少し背筋を伸ばしながら飲む印象を受けることの多かったヤラヴァレーの概念を良い意味で見事に覆された瞬間だった。
オーストラリアの各産地の持っていたイメージを、覆していくことが今のトレンドなのだろうか?
トロピカルな香りとほのかなオークのアロマが楽しめる、私の飲み慣れたマーガレットリバーのシャルドネでさえも、セイボリーで複雑な顔つきを魅せ、一筋縄ではいかない姿勢が感じられた。
「近年、オーストラリアワインが暴れている」という声を聞いたことがある。
常識を覆し、変化し続けるオーストラリアワインが面白く、飲んでいて全く飽きがこない。オーストラリアワインファンが、もっともっと増えて欲しいと願う今日この頃である。
この記事を書いた人

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2015年にオーストラリアへ移住。WSET WineEducationにてワインを学び、現地でソムリエを経験。WINE LISTのオーストラリア現地スタッフとしての他、ワインコンサルタントとしても活躍。毎月パース市内にて、ワイン教室を開催。
Facebook: Kisaki Moto instagram: kisakimoto
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