シャブリとの出会い
私が、シャブリという言葉を初めて耳にしたのは、今を遡ることはるか昔、かつての人気漫画「美味しんぼ」を読んだときのこと。当時はワインについてはサッパリで「シャブリ」も「ヴォーデジール」も何のことやら。その後、ワインに興味を持つようになった数年前、丸の内にある「コットンクラブ」で初めてシャブリを口にすることとなる。
アメリカのジャズヴォーカリスト「ヘイリー・ロレン」の瑞々しくもスモーキーな歌声(ちょっとワインみたいな表現!)を聴きに行ったのだが、その薄暗い店内でソムリエさんがそっと近づいてきて「旦那、今夜はシャブリのいいのが入ってますぜ」と私の耳元で囁くので、「あぁ、シャブリね。ではもらいましょうか」と知ったかぶりして、ドキドキしながら飲んだものだった。
ワインエキスパートの知られざる使命とは!?
それから時は流れて・・・。今は自分がワインエキスパートを名乗って、こうしてシャブリのセミナーに関するレポートを書いているのだから、人生はわからない。
ご縁があってワインの世界に飛び込んではみたものの、専門的に勉強していくと困ったことが起こる。これは試験勉強をしていて痛感したのだが、誤解を恐れずにあえて言おう! 『ワインエキスパートとは、自分が飲んだことのないたくさんのワインについて、また行ったことのないたくさんの国や生産地について、さも飲んだことがあるかのように、まるで行ったことがあるかのように「大いなる知ったかぶり」をしなければならないのだと!』
わ~、ソムリエ協会に怒られそう! 私はシャブリどころかフランス、いやいやヨーロッパにすら一度も行ったことがない(汗)。試験対策のため、田崎真也先生のサロンで何回かテイスティングをした程度で、実際にシャブリを口にする機会はほとんどないまま、ここまで来てしまった。また、筆記試験に向けてシャブリも勉強したが、他にも覚えなければならない膨大な情報量(教本は電話帳くらいの分厚さ!)を考慮すると、7つのグラン・クリュの名称、地図上でのその位置、一番広い面積のクリュはどこかなど、ポイントを絞らざるを得なかった。
かつてのシトー会修道院が所有していた歴史的な畑である「ムートンヌ」が、現在はドメーヌ・ロン・デパキの持ち物であるというところまで覚えるので精一杯。だから、40あるプルミエ・クリュまでは正直手が回らなかった。
でも・・・。そんな私がワインを語ってもいいのである(笑)。たとえ海外で勉強した経験がなくても、やる気さえあればワインエキスパートになれるのだから、その点では「ワインの世界は誰にでも平等に門戸が開かれている」と言っていい。
とは言え、いつまでも「知らないということ」を自慢している訳にもいかない。したがって、今回のセミナーは、その「知ったかぶり」に磨きをかける絶好のチャンスだ! 感謝なのである。