今年、日本上陸を果たしたばかりのシャンパーニュのブランド『パルメ』。ここでは、それがどんなシャンパーニュなのかを解説。これからシャンパーニュを飲んでみようかな、とおもっている人、パルメからシャンパーニュを初めてみては?
あなたのファーストシャンパーニュに『Palmer(パルメ)』を
2020年世界チャンピオンの実力派ブリュット
パルメの意外な命名
パルメという名前、日本に来たばかりのシャンパーニュだから、まだ聞いたことがあるという人はほとんどいないでしょう。でも、覚えやすいとおもいませんか? このパルメという名前、どこから来たのでしょう。
ワイン好きの方ならば、もしかして、ボルドーの名門『シャトー・パルメ』と関係が? と思うかもしれませんが、不正解です。むしろ、シャトー・パルメは、名前が似ているからパルメという名前は使わないでくれ、と要請をだしたほど。そこで、パルメは、自分たちのシャンパーニュをシャトー・パルメに送りました。すると、そのクオリティの高さに驚き、要請を取り下げ、以降、両者は良好な関係を続けています。
では、パルメの名前の由来は? というと、それは、1822年創業のイギリスのビスケットメーカー『ハントリー&パーマー(Huntley & Palmer)』から来ています。ハントリー&パーマーのビスケットは緻密なデザインのブリキ缶に入っていることで有名で、革ベルトで束ねた8冊の本にしか見えない缶など、装飾性とクオリティの高さから、現在でもオークションなどで取引されています。
創業当時、シャンパーニュ地方でも人気だったこのビスケットメーカーから、パルメは、世界的ブランドになったときにシンプルで覚えやすく、愛される名前を、ということで、パルメという名前をつけました。
7人の造り手たち
ボルドーの名門を唸らせ、ビスケットの名前から、自分たちの組織の名前をつけたのは、7人の若者でした。
シャンパーニュ地方は北からモンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランと大きく3エリアに分かれますが、このうち、一番北のモンターニュ・ド・ランスの7人のシャンパーニュ生産者が、「世界をアッと驚かすシャンパーニュブランドを創り上げよう」と、1947年に設立したのが、パルメです。
7人全員がグラン・クリュ(特級畑)とプルミエ・クリュ(1級畑)の所有者だったことから、最初、『ソシエテ・デ・グラン・テロワール・ド・ラ・シャンパーニュ』つまり『シャンパーニュ地方の偉大な土地の会社』という長い名前にしたのですが、その後まもなく、パルメに改名します。
7人の夢を乗せたパルメは順調に成長。シャンパーニュ全域に畑を拡大し、生産能力をあげ、現在は200㏊以上の特級、一級の畑のブドウを使ってシャンパーニュを造る、かなり恵まれたブランドになっています。
こうして成長できたというのは、パルメの実力の証明。いままで、シャンパーニュを愛する日本に来ていなかったのが意外ですらあります。
ソレラシステム
2019年、パルメは新しいワイナリーをオープンしました。
新しいワイナリーは傾斜した土地にあり、重力を利用することで、ワインを移動させる、という、ワインにも、環境にも優しい仕組みをもっています。
ガラス張りで開放的なモダンな建築は、年間約285万本もの醸造能力をもち、地下には、シャンパーニュ地方ならではの、洞窟のようなセラーがあります。
セラーの中では、たくさんのシャンパーニュたちが、長期熟成中。さらに、パルメではソレラという仕組みを導入して、ワインを熟成させています。
シャンパーニュ地方では、その年に収穫したブドウを全部シャンパーニュにして売ってしまうのではなく、一部を今後のためにとっておきます。こうして保管されるワインをリザーブワインといって、新しいワインとリザーブワインとを組み合わせることで、複雑な味わいを実現しています。
パルメはこのリザーブワインの保管方法のひとつとして、ソレラという仕組みがあります。
もともとはシェリー酒で使われていた仕組みですが、シャンパーニュでも一部にこのソレラを導入している造り手がいます。造り手によってやり方はさまざまですが、パルメの場合、まず、その年の新しいワインをオーク樽で6から8カ月熟成。その後、大きなステンレスタンクにこれを入れます。
大きなステンレスタンクには、毎年、新しいワインが継ぎ足されていきます。そして、そのワインは、時にはリザーブワインとして、時にはシャンパーニュの最後の味の調整につかうリキュールの元として使われますが、全部使い切ってしまうことはありません。減っては継ぎ足し、減っては継ぎ足しと、時間が経てば経つほど、さまざまな年のワインが混ざり合うことで、その造り手ならではの、レシピのないワインが出来上がります。
パルメではこれを35年以上、続けています。
ブリュット・レゼルヴから始めよう
ワインの造り手は、毎年、たくさんの種類のワインを発売します。ブドウが育った場所が違ったり、収穫年が違ったり、といった理由で造り分けているのですが、これはワインを試してみようかな、とおもったときに、どれを選べばいいかわからない、という悩みのタネになりがち。
しかし、シャンパーニュの場合、まず最初に何を選ぶかはそんなに迷う必要はありません。
パルメの例で説明してみましょう。パルメは日本上陸とともに、5種類のシャンパーニュをリリースしています。
最も高級なのが『アマゾーヌ・ド・パルメ』。黒いボックスに入ったこのシャンパーニュは、最良の年の最良の畑のブドウをブレンド。これを10年から15年もの間、熟成して、最後の仕上げ作業も完全に手作業という、最高に贅沢なシャンパーニュです。
ついで高級なのが『ヴィンテージ 2012』。2012年は、シャンパーニュ地方で素晴らしいブドウが収穫された、いわゆる当たり年です。この年のブドウだけを使って造ったのが、このシャンパーニュ。8年も大切に熟成されて、いま、売り出されているのですが、売り切れてしまえばもう二度と味わえません。だからこれも特別なシャンパーニュです。
続いて、『ブラン・ド・ブラン』。これはシャンパーニュ地方では、シャルドネというブドウだけで造りました、ということを意味します。パルメの創業者たちが所有していた畑は、特にシャルドネの名産地とされている場所で、そのシャルドネは特別なもの。これをシャンパーニュ地方の南のシャルドネとブレンドすることで、味を調節し、爽やかで厚みのある味わいを造っています。
その次に『ロゼ・ソレラ』が来ます。これは先程のソレラ方式でつくられた、赤ワインをブレンドしたものです。単体でワインとして販売するわけではない赤ワインを、ロゼのためにわざわざ造るため、シャンパーニュでは白よりロゼのほうが高級品です。
そして最後が、『ブリュット・レゼルヴ』。もっとも手軽な価格で、かつ量も多く造られるシャンパーニュですが、これが、パルメのもっともパルメらしい作品でもあります。パルメの誇る畑のブドウから造られたワイン、複数の収穫年にまたがるリザーブワイン、手持ちの素材を自由に使い、ブレンドすることで、造り手が、これがパルメだ、とイメージするワインを、もっともストレートに表現できるのが、これだからです。すべてのシャンパーニュの基本ともいえます。
このブリュット・レゼルヴのようなシャンパーニュを一般的にノンヴィンテージのブリュット、と呼びます。ほとんどのシャンパーニュの造り手が、これを、自分たちのフラッグシップとして造っています。ノンヴィンテージのブリュットが美味しいと感じれば、その先にある、より高級なボトルも楽しめるはずです。だから、まず試すべきはこれです。
パルメのブリュット・レゼルヴは、2020年には、シャンパーニュ&スパークリングワイン世界選手権にて、ノンヴィンテージのブリュット部門で世界チャンピオンを獲得しています。4500軒以上あるシャンパーニュの造り手のほとんどが造るノンヴィンテージのブリュット部門で、チャンピオンになっているわけですから、実力は折り紙付きです。
とはいえ、決して難しいシャンパーニュではありません。そのスタイルの基本は爽やかで、軽快。
友達と、家族と、よく冷やしたブリュット・レゼルヴで乾杯。そんなシチュエーションに似合う、誰もがすんなりと受け入れられるフレンドリーなシャンパーニュです。そのまま時が流れて、すこし、シャンパーニュが温まったら、今度はちょっと、パルメと向き合うつもりで味わってみてください。そうすれば、最初はわからなかった、ナッツやクロワッサンのような風味が、実は、爽やかな味わいを陰で支えていたことに気づくのではないでしょうか? それが、パルメを造る人たちが、そのブリュット・レゼルヴを4年の歳月をかけて育てた証。時間と歴史が生み出すパルメの隠し味なのです。
シャンパーニュ パルメ
URL:www.champagne-palmer.fr/ja/
総代理店 都光
URL:toko-t.co.jp
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