「クケリ」は獣や犬を意味するサンスクリット語「クララ」から派生した言葉で、言葉通りに恐ろしい獣や毛むくじゃらの犬のような衣装を身にまといます。
伝統的な仮面は牛や犬に似たものが多く、現代的な仮面にはビーズやペイントなどでカラフルな飾り付けをしたりします。白く塗られた仮面は明るく水のように透き通る意味があり、黒い仮面には土や自然の意味があります。また現世の善と悪を表す、朗らかで優しい面と恐ろしく酷い面、二面性を併せ持つ仮面などもあります。
ユニークな衣装だけではなくベルトにつけるベルも見ものです。ベルの大きな音が悪霊を追い払うと言われているので、重いベルを何個もつける人もいます。リーダー以外は独身の男性が様々な役を演じ、お祓いのため大騒ぎしながら通りを行進したり踊ったりして祭りを盛り上げます。
「クケリ」は数千年前、今のブルリアを中心にバルカン半島全域に居住していた古代トラキア人が始めた祭りであると言われています。ブルアリア東南部にあるペルペリコン遺跡からはワインの神様ディオニソスの神殿が発掘されました。豊穣の神でもあるディオニソスは冬の終わりと春の到来を祝う祭りのシンボルとして崇められていました。その祭りが形を変え、悪霊や災いを追い払い、春と共に幸福を呼ぶ祭り「クケリ」として連綿と受け継がれてきたのです。
その意味では季節の変わり目の邪気や悪霊をお祓いし、幸福を願う日本の節分や、東北地方のなまはげに通ずる祭りとも言えるでしょう。
一昨年の12月にこの「クケリ」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。
昔はブルガリア全土で行われていた「クケリ」も現在では一部の市町村でのみ続けられていて、一番有名なのが首都ソフィアから程近いペルニクで行われるスルヴァ仮面祭と呼ばれている「クケリ」です。
ユネスコの無形文化遺産に登録されたのもこのペルニクの「クケリ」です。
6月上旬のカザンラク(バラの谷)バラ祭りと並んでブルガリアの名物イベントであるブルガリアのペルニクのクケリは今年は1月27日から3日間行われます。酷寒の季節ですが一度この奇祭に足を運んでみるのも良いかもしれません。