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シャンパーニュメゾン訪問記その3 ドメーヌ ファル B. ド ボーフォール

母なる愛が原動力のレコルタン・マニピュラン

シャルドネの聖地からピノ・ノワールで名高いブジー村へ。須藤千恵子さんによるシャンパーニュメゾン訪問記その3。その1のシャンパーニュ・アンリオ、その2のペロ・バトー・エ・フィーユはこちらをクリック。

穏やかで寛容な雰囲気のブリジットさん。家族への愛とシャンパーニュへの情熱でいっぱいです。

ピノ・ノワールのグラン・クリュの村へ

シャンパーニュメゾンを訪問するための旅が続いています。前回「シャルドネの聖地」コート・デ・ブランの次は、モンターニュ・ド・ランス。

向かう先はそのモンターニュ・ド・ランスにおいて力強くリッチなピノ・ノワールを生むと称されるブジー村のレコルタン・マニピュラン、ドメーヌ ファル B. ド ボーフォール(Domaine Phal B. de Beaufort)です。

2008年にブリジット・ボーフォールさんが創立、2009年に初リリースした、生まれたばかりのメゾンとも言えますが、所有する畑はすべてグラン・クリュ、平均樹齢は35年のピノ・ノワールとシャルドネから豊かさと複雑みを兼ね備えるシャンパーニュを生産しています。

訪問した時間はすでに18時近くとなっていましたが、初夏のシャンパーニュ地方はまるで日の入りを忘れてしまったかのように明るく、それでいて乾いた涼しい風が昼の陽に火照った肌を心地よくクールダウンしてくれます。

迎えてくれたのは創設者のブリジットさんご本人。笑顔でサロンへ招き入れていただき、販売中のシャンパーニュを試飲しながらお話をうかがいました。

まずメゾンの名前となっているPHALの意味。

これはブリジットさんのふたりの子どもの名前、息子のピエール-エルベール(Pierre-Herbert)さんと娘のアンヌ-ルイーズ(Anne-Louise)さんの頭文字で、続くBはブリジット(Brigitte)さんの頭文字。ブリジットさんは多くを語りませんでしたが、メゾンが創立された約10年前、ふたりのお子さんはまだ幼く、「家族を守る!」という彼女自身の強い決意がメゾンの名前に込められたのだと想像します。

所有する畑はブジー、アンボネイ、トゥール・シュル・マルヌにあわせて4ha、平均樹齢は35年、すべてグラン・クリュと恵まれています。

この畑から授かる素晴らしいシャンパーニュを分かちたい、という想いからシャンパーニュつくりを始めたそうです。

畑での作業は土壌、環境、品質を尊重し、リュット・レゾネを行い、ヨーロッパでの新たな認証も得ています。

ブジー村を一望できる丘。太陽が燦々と照らされる大地にピノ・ノワールが植えられている。

4haの畑は地理、地質で14パーセルに細分化され、それぞれの畑は向きによって、ふくよかさや複雑さを備えたブドウが育ちます。ピノ・ノワールは力強さとフルーツ味を、シャルドネはフィネスとフレッシュさをもたらし、この多様性が異なるキュヴェを作り上げることを可能とするのです。

さらに年によってできあがるブドウのキャラクターはまったく異なるため、「まるで子供のよう」とブリジットさんは話します。

試飲させていただいたのはすべてミレジム。子供のように異なるぶどうのキャラクターを見極め、シャンパーニュつくりが行われています。

以下を試飲させていただきました。

エクスプレッション ブジー グラン・クリュ ブリュット 2011
75%ピノ・ノワール、25%シャルドネ
生ドサージュは6g/L
産量4500本
夏が暑く、8月中旬に収穫した早熟な年。マロラクティック発酵は行わない。
まろやかでフレッシュな口当たり、その後鼻腔をのぼるスパイシーさが印象的。

エクスプレッション ブジー グラン・クリュ ブリュット 2010
75%ピノ・ノワール、25%シャルドネ
生産量750ml3000本、マグナム500本
ドサージュ8g/L
同じセパージュにもかかわらず2011年と比べ力強く、フルーツみも赤果実とかんきつ系果実が混在し、複雑さも備える。食事とあわせたいシャンパーニュ。

ハーモニー ブジー グラン・クリュ ロゼ 2011
白ワイン(ピノ・ノワールとシャルドネ各44%)と赤ワイン(ピノ・ノワール12%)のアッサンブラージュ
ドサージュ6g/L
生産量2000本
シャルドネのミネラル感とフレッシュさにフランボワーズのような赤果実とグレープフルーツのようなかんきつ系の果実が加わり、バランスが心地よい。余韻に旨みが持続する。

ハーモニー ブジー グラン・クリュ ロゼ 2012
86%シャルドネ、14%ピノ・ノワール
ドサージュ6g/L
生産量2000本
2011年と比べ色調はより鮮やかでくっきりとした印象。香りにサクランボやザクロといった小さな赤系果実を思わせる。ミネラルや塩み、優しくフレッシュな口当たりに果実の厚み、フローラルな印象を与えてくれました。

そして、メゾン誕生から初のリリースとなったシャンパーニュ! 

プリヴィレジ グラン・クリュ エクストラ・ブリュット 2009
平均樹齢45年のピノ・ノワール80%、樹齢22年のシャルドネ20%
ドサージュ4g/L
生産量3000本 
8年澱と一緒に熟成を経た、繊細にて軽快な泡。イチゴや熟したレモンのようなアロマがブジーの特徴を表している、とブリジットさんは語ります。溌溂としてエレガント、なめらかに滑るような口当たり。味わいには赤系フルーツや梨、ブリオッシュなど複雑さが続き、かんきつ系果実感である余韻が口中をしめる。

試飲させていただいたシャンパーニュはそれぞれ、生産年によって変わるブドウの特徴を見極めつくられたキュヴェでした。

ブリジットさんのわが子を慈しむような大きな愛に育てられたファル B. ド ボーフォールのシャンパーニュはモンターニュ・ド・ランスというゆりかごから今後も世に送り出されていくことでしょう。

子供たちの頭文字を、ブリジットさんの頭文字Bがぐるっと囲むようなデザインが施されたメゾンのマーク。

メゾン ファル B. ド ボーフォール

インポーター:株式会社ヴァンクロス
www.vin-x.jp

この記事を書いた人

須藤千恵子
須藤千恵子
語学留学など世界複数国に滞在するなかで異文化と触れてきた経験と、帰国後にワイン輸入販売社勤務経験から、ワインと食の在り方など、独自のPR活動を行う。(社)日本ソムリエ協会ソムリエ、(社)日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMA、(社)日本フードアナリスト協会フードアナリスト。

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