聖母マリアが見守る丘
フランス、ブルゴーニュ地方のワインと言えば、「女王のワイン」と称され、その人気は不動の地位を得ているといっても過言ではないでしょう。
赤ワインはピノ・ノワール種という小粒のやや淡い色調を持つぶどう品種から生まれ、白ワインはシャルドネ種という、やはり小粒で黄金色をしたぶどう品種から生まれるワインが基本ですね。
世界中でピノ・ノワールやシャルドネでつくられたワインが高評価を得ている現代ですが、やはりブルゴーニュワインには、他の追随を許さない歴史的背景と、なんといっても味わいがその魅力に拍車をかけています。
首都パリからTGVで2時間程度、ガストロノミーの都リヨンからも1時間程度であることも、大きく発展した理由のひとつかもしれません。
ブルゴーニュにおけるワインの歴史は2000年といわれ、宗教・政治、そして市井の人々とも深く関わってきました。
ここでブルゴーニュ地方を大きく6つの地域に分けると、その中のふたつの地域は特に銘醸地として知られ、「コート・ドール(黄金の丘)」という県に存在しています。この名前を聞いたことがある方はきっと多いことでしょう。
このコート・ドールの片側コート・ド・ボーヌに、緩やかにそびえる丘に挟まれた風が吹き抜ける村、ペルナン・ペルジュレスがあります。古くから、植樹されたぶどうの樹々を守る人たちが暮らし、ワインの醸造を行ってきた村です。
そもそも「ペルナン(Pernand)」 は「泉」、「ヴェルジュレス(Vergelesses)」は、ヴェルジー(Vergy)に続く道を意味する地名だそうです。
ここでふたつのドメーヌを紹介。
ひとつは「ドメーヌ・デュブルイユ=フォンテーヌ」。
ペルナン・ヴェルジュレスを本拠地とし、近隣&ポマールやヴォルネイに20アペラシオン、合計20ヘクタールを所有しています。
発酵には主に温度調節付きのステンレスタンクを用い、80-100%梗を取り除き、赤ワインよりも白ワインに新樽を多く用いる傾向があります。樽、特に新樽は木のニュアンスがワインを特徴づけます。ワインの個性を引き立たせるもなくすも、樽の使用比率が関わることはいうまでもありません。
もうひとつ紹介する生産者は、「ドメーヌ ラペ ペール・エ・フィス」。歴史は古く1765年に遡ることができます。
前述のデュブルイユ=フォンテーヌと異なりステンレスタンクを使用せず、樽を用いた醸造を行っています。ただしブルゴーニュの伝統的樽228リットルを用いず、350リットルを使用しています。これは、樽の効果は狙っても、ニュアンスは出し過ぎない、という生産者の工夫の表れですね。
ぶどう樹は病気や害虫、天気によって収穫が大きく左右され、それは生産者の生活をも直撃する事態になります。
科学が発達しようと、技術が革新しようと、人智の及ばないときは祈るしか術はないようです。
聖母マリアはその子イエスを腕に抱き、このペルナン・ヴェルジュレスを今も見守っています。