春の大仕事、サッカリング=間引き
春になり、剪定されたぶどうの木たちは、次々と芽を出しています。剪定はワインメイキングのスタートにあたる作業であり、その年のハーベストの収穫量を決める大切な作業というのは以前に取り上げたとおり。
(剪定についての記事「ワインメイキング2018、はじまりました」を読む)
どのつぼみを残すか、だいぶ悩みながら剪定して「ばっちりだぜ!」と思っていたのもつかの間、久しぶりに畑に戻ってみると、思ったよりモサっとしているぶどうの木たち…。
こんなに変化がありました。
別の畑の木ですが、近寄ってみると…
あれ…残したはずのつぼみよりもだいぶたくさんの芽がでている!
これはサッカーといって、不要な新芽。
ぶどうの木は手入れしないと、幹のあちらこちらから芽を出します。ぶどうにしてみたら生き残るための防衛反応なのでしょうけども…。
このまま成長させても果実はできるとは思いますが、うまく熟さなかったり、風味が薄くなったり、病気にかかったりしてしまう可能性があります。
選定で残した枝だけに全てのエネルギーを使ってもらいたいので、余分な新芽たちとさようならします。それが、春の大仕事「サッカリング」、つまり「間引き」です。
ナパではだいたいどの農家もサッカリングを行っています。
一筋縄でも、一回きりでも終わらないサッカリング
では、いざサッカリング!
まず、幹部分に芽は不要なので、基本的に全て取り除きます。
また剪定の時に残したつぼみも一筋縄ではいきません。ひとつに見えるつぼみの中には、実は2~3個つぼみがはいっているのです。
そして、場合によっては、中に入っている3つのつぼみ全部から、芽がでることもあります。
そういう場合は、一番健康そうなものだけを残して他を取り除きます。おいしいぶどうを実らせていただくために、一点集中でお願いするのです。
サッカリングは遅くなればなるほど大変になります。まだ新芽のうちは柔らかいので、手でポキッと折れば根元からキレイに取り除けますが、成長してしまうと木化して硬くなるため、ハサミを使わなければならないのです。細かな作業が必要なので、指先でサクサク進められる方が断然効率が良いのです。油断すると大切な芽までポキッといってしまうので注意が必要ですが…!
わたしは今回、不要な新芽を取り除くサッカリングと並行して、過剰な葉を取り除く作業も行いました。葉が多すぎると空気の流れが悪くなり、湿気を好む病気にかかりやすくなってしまうのです。その予防のため、葉を取り除いて根元付近にスペースをつくります。また、日当たりをよくすることで、結実後のぶどうの熟成を助ける役割もあります。
サッカリングが終わって一週間後、畑の様子を見に行ったわたしは、またまた驚かされました。ぶどうの芽たちがすごい勢いで成長していたのです。これまでたくさんの芽の成長のために使われていたエネルギーが少数精鋭になり、一点に集中したことで、生育速度が加速したようです。
そして、もうひとつの驚きは…
ご覧ください。
サッカーたちは数日で、どこからともなくまたまた出てくるのです。
ショック!!!
つまり、収穫前までは定期的にサッカリングをしなければいけないのです。
当然ですが、全て手作業です。しかも立ったりしゃがんだり、中腰キープだったり、と結構なエクササイズ。9~17時で作業すると、いろんなものが燃え尽きます。
でも、すべてはおいしいワインのために!
と自分をモチベートし、連日畑に舞いもどってサッカリングに挑んでいます。
どんなに技術が進歩して機械が発明されても、人の目でなければ判断できないこと、人の手でなければできない作業は残っていくのかもしれません。それがワイン造りの面白さであり、また価格の理由だったりするのです。普段飲むワインも、たくさんの新芽がサッカリングされた結果、残った精鋭たちが凝縮されたのだと思うと、ちょっと感慨深いものがありますよね。