「芽接ぎ」のやり方、教えます
芽接ぎは台木に切り込みを入れて、穂木から切り取ったつぼみをつけ、テープで固定するだけ。というと簡単そうに聞こえますよね!!
でも台木と穂木の形成層(cambium)をきちんと密着させるために、角度や大きさを考えなければいけません。わたしも授業の一環でチャレンジしましたが、思った以上に難しい! 枝ってけっこう硬いのです。ぐっと力を入れて切らないといけないのですが、ちょっと間違えるとナイフで指をスパっとやってしまいます。実際、クラスメイトは指を切ってしまって…。そんな光景を目の当たりにすると、怖さも相まってなかなかうまく切れないのです…。
しかし、やはりプロはスゴイ!(当たり前だけど) 流れるようにどんどんと芽接ぎしていく様子は圧巻です。
それでは工程をご覧ください。
すでに畑に植えてある台木の葉をカットし、切り込みを入れます。
穂木の枝からつぼみを切り取ります。
そして、台木につぼみをくっつけます。
最後にビニールテープで留めて完成です。
この行程を30秒くらいで終わらせちゃうんです!
「多いときは一日に500本くらいやるよ。ハハハッ!」なんて笑っていました。職人さん、恐るべし!
芽接ぎで品種変更もできちゃうのです
芽接ぎの時期は初夏が良いといわれているそうです。ちょうどブドウの木の成長が活発になる時期で、冬眠までしばらく時間があるため、組織同士がしっかり癒合するからとのこと。
プロが芽接ぎすればだいたい成功しますが、うまく癒合されなかったり、成功したと思っていても穂木と台木の相性やストレス具合によっては数年で枯れてしまうこともあるそうです。
ちなみに、芽接ぎは健康な台木と穂木を組み合わせるためだけでなく、品種を変えたい時などにも行われます。ナパではカベルネ・ソーヴィニヨンが王様なので、ジンファンデルやシラーなどから芽接ぎで品種変更をする畑が後を絶ちません。育てる手間はほぼ同じですが、カベルネ・ソーヴィニヨンの販売価格は圧倒的に高いので、生産者側としては当然の選択なのでしょう。でも、選択肢が狭まってしまうのは消費者としては悲しいですよね…。
話がそれてしまいましたが、品種変更の例として、次の写真をご覧ください。シャルドネだった木にマルベックのつぼみを付けて品種変更を行ったものです。
この畑は約5年前に芽接ぎしたそうで、全体的には元気にそだっています。しかし数パーセントの木は、芽接ぎ直後は問題なく成長していたのに、急に弱々しくなって枯れてしまったとのこと。
畑を管理している友人に、どうして枯れてしまったのか尋ねたら、「本当のところはわからない。30年以上ぶどう栽培に関わっているけれど、未だにはっきり答えがだせないことがたくさんあるよ。自然を相手にするっていうのは、そういうことだと思う。日々勉強だよ。」という答えが。
プロでさえ理由がわからないというのは驚きです。
そして、彼のように全て知った気にならず、わからないことを素直に受け入れ、真摯に学び、究めようと挑み続ける姿勢がワイン業界を支えているのだなぁと改めて感じました。
自然相手のワイン造りには、まだまだ謎が多いのです。その謎がワインの味の深さや面白さを生み出し、人を惹きつけ続けているのかもしれませんね。