たくさんのヘルプと恵みの雨で鎮火
ナパとソノマで同時多発的に発生した火災。なかでもサンタ・ローザの被害が甚大で、10月10日の時点で5300軒以上の被害が報告され、カリフォルニアの火災史上で最も被害が大きい火事となりました。薩摩藩士・長澤鼎に縁のあるワイナリー、パラダイス・リッジや、スヌーピーの作者であるチャールズ・M・シュルツが住んでいた家が被害に遭ったニュースは日本でも流れたようですね。ナパのダウンタウンでは火災の被害はありませんでしたが、煙の影響でPM2.5の濃度が高くなり、マスクの装着が推奨されていました。
CAL FIREの発表ツイート:https://twitter.com/CAL_FIRE/status/921441414981885952
カリフォルニアだけでなく、周辺の州から10000人以上の消防隊員、警察官が協力に駆けつけ、消化の進捗は火災の規模から考えるととても早かったと思います。翌週には、長時間まとまった雨が降った日があり、鎮火状況は80~90%に。その週末頃から、ワイナリーの多くが営業を再開していました。
多くのワイナリーが通常営業を再開しました
いま、ナパとソノマのあちこちで見かけるのが「Thank you First responders!」という垂れ幕や手作りの掲示。道路から見えるように掲げられています。警察・消防の方たちへ向けた、感謝のメッセージです。また「#napastrong」「#sonomastrong」というハッシュタグもSNS上で使われています。ワイナリーの多くは寄付を行ったり、テイスティング料金を寄付に回したり、と1日も早い原状回復を目指しています。被害に遭ったワイナリーも、前述のパラダイス・リッジではオーナーが再建を宣言しましたし、ゲストハウスが全焼したケンゾー エステイトも修復計画を始めるなど、それぞれのワイナリーが動き出しています。
「2017年の収穫は90%終わっていた」との発表もありました。ただ、最も価格の高いぶどうであるカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫がまだだったところが多く、煙の臭いがどれほど残るかはわかりません。また通行止めや停電のせいで発酵中のケアが十分できなかったワイナリーもあるようで、ワイン品質への影響が懸念されています。しかし、わたしのまわりでは「ほぼ影響がないので、例年通りワインを作る」「洗えば臭いは取れる」というポジティブな報告がほとんど。ぶどうの木たちも葉っぱや枝の端が少し焼けたくらいなら復活できるんです。毎年、冬にはこれでもかというくらい剪定しますからね。
火災発生時はちょうど乾季だったため、カラカラに乾いていた家屋や牧場の干し草、山肌の樹木などは一気に焼けてしまったようです。しかし、意外なくらいぶどう畑や民家の芝生などは焼けていないんです。被害の大きかったアトラスピーク地域も、ぶどう畑の前で被害が止まっているところが多くありました。ぶどう畑は散水がされていたため、周囲のオーク林より湿度があったこと、また乾燥した木枝が少なかったことで延焼を防いだようです。
私もテイスティング・ルームでの仕事が再開しましたが、やはり訪問される方は減っているなあ、と感じます。火事から2週間後に、あるワイナリーを訪問した際、「火事の大きさに重点を置いて報道されているから、ナパとソノマの全てが被害に遭ったと思っている人が多いんじゃないかな。無事なところがほとんどだし、お客さんに来てもらうことが一番のヘルプになるんだけどね」と店員さんが話していました。
先週のナパはまるでゴーストタウンのようでした。観光業がメインなので、お客さんが少ないととても寂しい雰囲気になります。早くまたたくさんの人に訪れてもらい、おいしいワインを飲んでもらうことが、復興への近道だな、とひしひし感じました。
ぶどうが紅葉し、美しい季節を迎えたナパとソノマの応援に、ぜひ足を運んでください。