ワイナリー概要:指定された住所に行ってもワイナリーが見つからない…!?
ナパの隣、ソノマ郡のサンタ・ローザにEric Kent Wine Cellarsはあります。テイスティングは要予約。約束の時間にその場所を訪れてみると…なにもありません。いえ、建物はあるんです。ずーっと長い壁に囲まれている、なんだか倉庫か工場みたいな建物が。
まわりは住宅地で、畑は見当たらず、ブドウの匂いもまったくしません。でも、住所は確かにここ。ナビもゴールだと示しています。おそるおそる建物を見に行ってみると、『PUNCHDOWN CELLARS』のステッカーが。名前は違うけど、パンチダウンはワイン造りで使う言葉だから、いいのかな…? 街の中にテイスティング・ルームを設けて販売をしているワイナリーもあります。
でもそういう所は「ワイン売ってます」といういかにもな造りにしてるんだけど…。なんて思っていたら、車から降り来てた男性が
「Saoriかい? いらっしゃい!」
と声をかけてくれました。そして「最初はみんなわからないんだよ」と笑ってます。
彼はセールス・ディレクターのJOHN GILLIS。テイスティングの予約が入ると、彼がここに来てホストしてくれるのだそうです。
案内された住所は、複数のワイン・ブランドが共同で使う醸造施設だったのです。その施設名が『PUNCHDOWN CELLARS(URL:http://punchdowncellars.com/)』。40以上のワイナリーが利用しています。もともとは同名のワイナリーの施設だったのですが、2004年に共同施設に路線変更をしたのだとか。
「せっかくだから、施設を紹介してあげよう」
とジョンに導かれて、施設の奥へ。さまざまなワイン・ブランドのロゴが目に飛び込んできますし、それ以上にいろんな設備があちこちに。卵形のタンクもあります。収穫後の工程から物流までこちらの施設でまかなえるとのことなので、「ワインビジネスに興味はあるけれど、巨額の資金は用意できない」といったベンチャー的ワイナリーにとってはチャレンジのハードルが下がりますね。
テイスティング:若手アーティストの作品を使ったエチケットは必見
テイスティング内容/価格:その時々で違うようです。
施設見学もすんで、いざテイスティング。場所は施設の通路のほぼど真ん中。ワイン樽に板を乗せただけのシンプルなテーブルに、次々とワインが並びます。ちなみに2回訪問しているのですが、別の日のラインナップはこんな感じでした。
いかがでしょうか。エチケット、すごくかわいくないですか? でも、実はこれ、裏なんです。表はブランドロゴとワインの説明、つまり文字情報だけ。裏はこだわりまくりの可愛いラベル。ちょっと意表を突いたデザインです。このラベルに魅せられたのが、訪問のきっかけだったりします。
こちらのワイン、新宿・伊勢丹のワインコーナーで売っているんです。その可愛さに「どこだろう。行ってみたい」と調べたのが訪問のきっかけ。
その話をすると「オーナーがアート好きなんだ。若いアーティストと契約して、こうしてラベルにしているんだよ」とジョン。基本的に同じ産地・同じ品種のワインは、同じアーティストのラベルを利用し続けるそうですが、2003年設立とまだまだ若いブランドでもあり、1ヴィンテージしか造らないワインも多いみたい。
なのでエチケットのバリエーションはとても多彩。それも自社畑を持たないワイン・ブランドのフットワークの軽さなのかも知れません。小さなブランドなので、少量生産。ちなみに、いま新宿・伊勢丹に売っている2種類のワインは、すでにこちらではSOLD OUTで買えませんでした。そして、いまは造っていないそうです。ラベルが気に入られた方は、ぜひお早めに!
ちなみにラベル・コレクションの本も作ったそうなんですが、「関係者向けだから、もう在庫もないし、売れないんだ」とのことでした。残念!
「それにしても、どうして日本人がうちのワインを知ってるんだい?」
と不思議そうなジョン。こちらのワインは、アメリカでもあまり手に入れることができないそうです。取り扱い店舗も、HPを見ると各州1店舗ほど。
「日本の百貨店で見かけて、ラベルがステキだなと思ったんだよ」と伝えると「そういえば、日本に送った気がするなあ」なんて苦笑い(ちゃんとインポートしている会社があるんですけどね…)。
「でもこれだけエチケットがバラバラだと、管理しにくいんだよ。いいかげん統一のルールを作ろうかな、って話も出てるんだ」
とのこと。今のところ2017年リリースは従来のアーティスティックな感じですが、そろそろ変わってしまうかも…。そうなると個人的にはちょっと残念です。
ワイン雑感:白はSBがお気に入り。赤はコストパフォーマンス抜群!
エリック・ケントのワインの多くは、産地プラス品種で名前がつけられています。白はシャルドネ/ソーヴィニヨン・ブラン、赤はピノ・ノワール/シラー/グルナッシュをメインに造っているようです。
お気に入りは、『CUVÉE RENEE SAUVIGNON BLANC』。31ドルと、ソーヴィニヨン・ブランの中では決して安くありませんが、品種の特徴であるフレッシュな果実感だけでなく、エキゾチックな風味と長い余韻を楽しめる一本。わたしにとっては、ただ喉を潤すためでなく、しっかりゆっくり向き合いながら飲みたいちょっと特別なソーヴィニヨン・ブランです。
赤ワインは比較的価格がお手頃。シラーやピノ・ノワールは現在40ドル台がほとんど。毎年すごい勢いで価格が上昇しているナパのワインたちに比べると、ソノマはすこしだけ緩やかですが、今後の価格上昇は避けられないでしょう。きっとエリック・ケントのワインたちも、徐々に値段が上がっていくはず。消費者としては残念ですが、好きなワイナリーが潰れてしまってはもともこもありません。エリック・ケントは、ワイン購入を通じて、微力ながらも支えて行きたい、私にとってとても思い入れのあるワイン・ブランドです。
完売してしまうヴィンテージ、造らなくなる品種、同じ名前でも敢えてエチケットを変えるワインなどが毎年あるようなので、もしお店で一目惚れしたなら、ぜひ早めに確保してくださいね。
Winery Information:
Eric Kent Wine Cellars
1160B Hopper Ave, Santa Rosa, CA 95403
https://www.erickentwines.com/