コミュニティカレッジって、なんだ?
アメリカのコミュニティカレッジとは、公立の二年制大学のことです。自分の選択するコースによっては、准学士号(Associate Degree)や修了証(Certificate)を取得することができます。取得した単位の一部を、4年生大学への編入に使うこともできるそうです。単位取得にこだわらない場合は、自分の興味ある科目だけ履修することもでき、イメージ的には市民講座、短期大学、専門学校が合わさったような感じです。
Napa Valley Collegeには、陶芸、音楽、看護、調理、文学、言語など様々な科目が用意されていて、そのなかのひとつに、わたしの学んでいるワインのコースがあります(Viticulture and Winery Technology)。
クラスメイトの中にはぶどう栽培やワイン醸造で有名な、カリフォルニア大学 Davis校に編入を希望している人も多く、その場合はワイン関係の科目に加え、准博士号の取得に必要なGeneral Educationとよばれる化学・数学・英語・生物等の科目も履修しているそうです。
日本では編入するために別の学校に行くというのはあまり聞かないと思いますが、アメリカではコミュニティカレッジで取れる単位を取ってから4年制の大学に編入する学生もたくさんいるとのこと。なぜならコミュニティカレッジは圧倒的に授業料が安いからです。
一方で、キャリアアップやキャリアチェンジ、また自分の興味探求のために学んでいる学生たちは、専門科目のみ履修して修了証の取得を目指したり、趣味の一環で興味のある授業だけをとったりと、目的に合わせて比較的自由に科目を選択しています。
おどろいたのは、学生の年齢の幅が広いこと。10代後半から70代までが同じ教室で学んでいるというのは、なかなか日本の学校では見られない光景なのではないでしょうか。わたしの取っているコースは、ワインを学ぶのが目的ということもあり、高校を卒業したばかりの若者は少なく、仕事をしながら学校に通っている20代後半~50代が大多数。
さまざまなバックグラウンドを持った人々たちと出会うことができ、おもしろい話がたくさん聞けます。また、既に業界内で働いている人が多いので、コネクションを作るのにも役立ちます。
ワイン造りって何を勉強するの?
ぶどう栽培や醸造学と言われても、ピンとこないかと思います。
ソムリエ試験等の勉強をされている方はある程度想像がつくかもしれませんが、以前のわたしのように、ただのワインラバーは特に製造過程にまでこだわりませんよね。「おいしいか、おいしくないか」、興味はそれだけ。
わたしは今でも「その時そのワインを自分がどう感じるかが全てだ」と思っているのですが、ワイン造りの流れを学ぶことで、どうしてこの香や味がでるのか、なぜこの価格設定なのかなど、マニアックなところが少し理解できるようになりました。そして、裏側を知ったからこそ、よりワインに感謝しながら楽しめるようになりました。
各学校により、用意されているカリキュラムは異なると思いますが、Napa Valley Collegeでは、ぶどう栽培と醸造を学ぶ講義、学校の持つワイナリーやぶどう畑で実際にワイン造りを体験する授業、テイスティングスキルやマーケティングについて学ぶ機会などが用意されています。
授業の例
Fundamentals of Enology
General Viticulture
ワイン醸造、ぶどう栽培についての基本を学ぶ講義。化学や生物の基本知識があると授業が理解しやすいと思います。
Winery Operations
Vineyard Operations
学校のワイナリーや畑で実際にワイン造りを体験します。ぶどうの収穫からワインになるまでをひととおり経験できます。ワイン造りがいかに体力勝負かを思い知りました。
Lab Analysis of Musts and wines
ワイン醸造において必要となる、糖度や酸度、アルコール度の測定といった基本的なラボワークを学びます。ワインクオリティを、数値を元に管理する重要性を痛感します。
Sensory Evaluation of wine
ワインテイスティングにおける基本的な知識や、味覚・嗅覚・視覚がどのようにテイスティングに影響するかを講義と実験、実際のテイスティングで学びます。実験がたくさんでおもしろいです。
Wines of the World
世界の代表的なワインについて学び、実際にテイスティングする授業。一回の授業で12-18種類(!!!)を、飲んで飲んで飲みまくる授業。テイスティング無しにワインを勉強することは不可能ですもの!
Wine Marketing
アメリカにおけるワインマーケティングの基礎を学びます。日本でマーケティングを勉強した人にとってはさほど目新しことはないかもしれませんね。ですが、アメリカのマーケットを知ることができ、また先生の話が面白いので飽きることはありません。
座学だけでなく、オペレーションを体験できるのはとても貴重です。勉強して分かったつもりになっていても、いざ実際にやってみると思うようにいかなかったり、新たな疑問がでてきたりするものです。
例えば、ワインはタンクや樽の中で発酵させたり保存したりすることは知っていても、タンクや樽はどうやって掃除するのかなんて考えることはないですよね。でも、「ワイン造りは9割がクリーニング」と言われるほど、施設や器具、機械を清潔に保つことが最重要事項なのです。また、「ワインを移動する際にはポンプを使う」と聞くと、さも当たり前のようですが、ホースのつなげ方や、ポンプ作業の手順をイメージできますか? と聞かれたら、返答に困ってしまいますよね。
畑に出ても一緒で、品質を保つために葉や茎の量を制限する、という知識があっても、ただやみくもに刈るわけにはいきません。きちんとした知識を元に、木の生育度合いや、日光の当たり具合、地形等多くの要素を現場で見極めて、その場所に合ったトリートメントをしていくことが必要なのです。
わたしは英語がままならないまま飛び込んだので、特に作業を通して学んだ部分が大きかったです。「なるほどー。クラスで先生が言っていたことよく分からなかったけど、こういうことだったんだ!!」と、よくひとりで納得していました。
そして、カレッジの畑やワイナリーの良いところは目一杯失敗ができるところです。ある先生は「失敗を経験するためにココがあるんだ!」とさえ言ってくれました。
思い返せばわたしも、ワインをタンクから樽に移す際に大量のワインをこぼしてムダにしたり、ポンプの操作を間違えてワインまみれになったり、剪定の授業で残すべき大切な枝を誤って切ってしまったり…と、いろんなミスをしてきました。
でも、どんなミスをしても、まずは安全を確認してくれ、必ず「大丈夫だよ!」と言ってくれる先生やクラスメイトたちがそばにいてくれます。一度失敗しておけば、同じ失敗は繰り返しにくいですし、なにより将来同じような事態が起こった場合の対応方法を学べる機会を持てる、というのが大切だと思います。
さぁ、ワイン造りに興味がある方は、実際に仕事に着く前にカレッジで失敗し倒しておきましょう!
Napa Valley College: http://www.napavalley.edu/Pages/default.aspx