2番 中華「羊香味坊」〜羊と獅子唐とオタフクソースのお好み焼〜
羊の旨味と香りが胃袋を鷲づかむ
羊もまさか、オタフクソースを塗られるとは、思ってもいなかったに違いない。しかしここには、初めて出会ったもの同士のよそよそしさは、一切ない。
ふんわりとした獅子頭(注)が口の中に広がると、まず、ソースのうまみが来て、次に甘味が広がり、ソースに混ぜられたクミンと花椒の刺激が鼻を突く。そして、最後にのっそりと羊の旨味と香りがやって来て、胃袋を鷲づかむ。そんな口の中の変化が面白い。また、中に入れられたレンコンのアクセントも生きている。
お好みソースも羊も、許容力が大きく、自分の存在を示しながらも、相手の良さを立てている点が素晴らしい。
獅子頭によくかけられる糖醋(タンツー)という甘酢あんに姿が似ているが、まったく違う。逆にこちらの方が、異郷の雰囲気があるのが面白い。
すかさず、ワインを飲む。合わせたロゼは、ソースや羊の香りを爽やかに流して、また一口食べたいという気にさせる。だが、食べて、まだ口の中に獅子頭が残っているうちに飲むのがいい。
するとソースの甘みに艶が出る。お好みソースがロゼによって、色気を増すとは、偉大な発見である。いやそれも羊の香りがあってのことなのか。その辺りはわからないが、この調子なら、BBQにもオタフクソースを持参し、焼いた子羊に工夫したソースを塗り、ロゼと楽しむのもいいかもしれない。
生産者のテヌータ・ディ・カステッラーロの畑は、シチリア島の北方にあるエオリア諸島のリーパリ島に点在する複数の畑から成り立っている。コリント・ネロとネロ・ダヴォラのブレンドからつくられるこのロゼは、生産者のHPによると、「複雑で強烈、でも朝のエネルギッシュな光」にたとえられる。「口当たりは複雑でエレガント」で、ベリーのような味わいとミネラルとのバランスに優れている。
羊香味坊(やんしゃん・あじぼう)
東京都台東区上野3丁目12-6
☎03-6803-0168
営業時間 月曜~金曜/11:30~24:00(L.O.23:00) 土曜/13:00~24:00(L.O.23:00) 日曜・祝日/13:00~23:00(L.O.22:00)
年中無休