羊の皮を被った狼も
先ほどの暗号のような文字列は、ボディの大きさとエンジンの大きさを表している。ドイツ車の多くは1つのボディに対しサイズ違いのエンジンが3~4種類用意されているから、扱いやすいサイズのボディにハイパワーエンジンを積んだ化け物のようなモデルも存在するのだ。同じ見た目の車でエンジンが数多く用意されているのはドイツ車ならではだが、一部のマニアを除いてどう違うのか分かりにくい面も否めない。そこで今回はドイツ車数台を長期間乗り比べた上での私なりの所見をご紹介するので、造詣を深めていただけたら幸いだ。
軽快なエントリーモデル(C180, 320i など)
比較的小さなエンジンを積むエントリーグレードは軽快さと燃費性能の高さが目立った。エンジン重量が軽いのでカーブで狙ったラインをトレースしやすく、街中のストップ&ゴーでも燃費が極端に悪化しないので心地いい。ハッチバック型のボディを選べば荷物が多い時の移動も不自由ない広さを備えつつ、土日で丸2日間走り倒しても途中で給油せずに済むのでレジャーにも便利だ。どうしても上位モデルと比べると遅いが、日本で乗る分にはさほど問題ないだろう。アウトバーンのあるドイツで生まれた車にとって日本の速度域はジョギング程度だからだ。
刺激の強いハイパワーモデル(C350, 335i, M3など)
一方で各モデルに設定されるハイパフォーマンスグレードは趣味色の強い車と言える。有り余るパワーがアップダウンの激しい山道も何事もなかったかのようにこなすし、高速巡航も余裕が違う。まるで管楽器のようなエキゾースト音も魅力的で、トンネルで窓を少しだけ開けて音を聞くのが私のお気に入り。高速道路での長距離移動が多い人にはうってつけだろう。ただしランニングコストは嵩みがちであるし、この手の車に多い2ドアタイプだと大人数での移動に難が出ることがある。
用途・趣向に合ったモデルを
実用的な車内空間を持ちながら燃費性能も高いモデルから、大きな車体に大きいエンジンを積んだモデルまで幅広いラインナップのドイツ車であるが、どのメーカーもすべてのモデルに共通した哲学・理念を持っている。例えばメルセデスであればエントリーモデルであっても内装の質感はかなりのものだし、BMWであればオーナーが後席に乗るようなモデルでも運転する楽しさを追求している。最近ではディーゼルやハイブリッドのモデルも増え、ますます選択肢が多くなったが主な用途や走りが好きかといった趣向を踏まえて最適なモデルを見つけよう。