クラシックなフランス料理は砂糖を使わない
ーー はじめに、美木さんはご自分のレストランを人気絶頂にもかかわらず閉店されたそうですが、なぜですか?
美木 よい料理を出し続けて、お客様に喜ばれるために料理人は常に勉強=食べることを続けねばなりません。私は現役時代、家4〜5軒分に相当する金額を投じて、あらゆる一流店の和食、寿司、フランス料理などを食べてきました。ほかのお店の料理を食べていないと、世の中の流れや自分の料理の立ち位置がわからなくなります。これを継続するには体力と信念がないとできません。年齢的に限界が来たので、お店を閉めたのです。
ーー お弟子さんにも厳しかったのですか?
犬房 私は美木さんと十数年前に食事をご一緒したことがご縁で、懇意にしていただいています。普段は厳しいことはまったくないのですが、お弟子さんにうかがうと違うんですね。あんなに厳しいシェフはいないぐらい厳しい。でも、むっちゃオモロイ人やから、厳しくてもついて行けたと、みなさん、おっしゃるのです。
ーー オモロイ人は関西ならでは、ですね。さて、犬房先生から出された今回のテーマは「なぜ、フランス料理は酸化ストレスを抑えることができるのか」ですけれど、フランス料理って、そもそも酸化ストレスを抑えるのですか?
犬房 最近、低糖質ダイエットが大ブームになっています。実は糖はヒトの体にとってはエネルギーになるのですが、摂取量が多すぎると酸化ストレスを上昇させて毒になるんです。
美木 クラシックなフランス料理は、料理に一切砂糖を使いませんし、パスタのような炭水化物もたくさん使うことはありませんから低糖質食といってよいですね。フランス料理だけを食べている方はスリムな体型をされた方が多いですよ。フランス料理のデザートはお砂糖をふんだんに使ったケーキなどがたくさん出てきますが、低糖質の料理を食べた後なので余計に美味しく感じられるのですね。
ーー なるほど。クラシックなフランス料理だと、デザートとパンを食べなければ、典型的な低糖質料理といえるわけですね。
美木 犬房先生、砂糖がなぜ酸化ストレスを上げることになるのですか?
犬房 食べ物からエネルギーを作るのは細胞の中のミトコンドリアという小器官が担っています。そして、エネルギーを作るときに呼吸で体に取り入れた酸素を使うのですが、エネルギー代謝に使われなかった酸素が酸化ストレスの元になります。実は糖分があるとミトコンドリアはサボってエネルギーを作らなくなり、その結果、酸化ストレスが上昇することが局博一(つぼね・ひろかず)東大名誉教授の実験で証明されているのです。
美木 糖の取り過ぎが酸化ストレスの元になるのはわかりましたが、酸化ストレスって簡単にいうと何ですか?
犬房 一言でいうと漂白剤ですね。色物服を洗濯するときに使うのは過酸化水素ですし、殺菌や消臭に使われているのは次亜塩素酸です。ほかにもたくさんの酸化ストレス物質がありますが、この2種類が体の中で増えることが酸化ストレスと思ってください。
美木 えっ? 漂白剤が体の中にあるのですか?
犬房 そうなんです。体に細菌が入り込むと白血球がそれを見つけ、その細菌を飲み込みます。そしてその細菌を殺す(攻撃し無毒化する)のに使うのが次亜塩素酸と過酸化水素なのです。次亜塩素酸の方が過酸化水素と比べて何十倍も高い破壊力があり、分子レベルで細菌を破壊(無毒化)します。
ーー 体の中に漂白剤の成分が増える、と考えただけで恐ろしいですね。
犬房 そうなのです。漂白剤成分でもある酸化ストレスは150種類以上の病気と関連していますし、白血球が集まってくる炎症性疾患では必ず酸化ストレスが上がっています。
美木 アルコールも飲み過ぎると酸化ストレスが上がるそうですが、やはり漂白剤成分が増えますか?
犬房 その通りです。今年の8月末に日本酸化ストレス学会で発表したデータを一部改変していますが、スパリブ、ビタミンC、水素水が次亜塩素酸と過酸化水素を消去する能力を表1に示します。ビタミンC、水素水は過酸化水素の消去能力はあるのですが、次亜塩素酸消去能力はほとんどありません。これがビタミンCや水素水の効果が限られている大きな理由ではないかと考えています。
ーー スパリブの次亜塩素酸消去能力はすごく高いですね。
犬房 手前味噌ですが、ほかに並ぶ効果のあるものは世の中にないようですね。
美木 だからスパリブを飲んでおいたら、少々飲み過ぎでもあんなに体が楽になるのですね。
トロワグロ直伝、伝説の料理「海の幸のポトフ」
ーー 美木さん、料理人として復活されることは?
美木 今から7〜8年前に、1日だけ「ジャンムーランの同窓会」と称して、お店で出していた料理を再現しました。私と一緒に働いたことのある有能なシェフたちと作りましたが、やはり体力は落ちているし、集中力もありません。復活はあり得ませんね。今は家族のために、自宅で中華料理を作って、ごく親しい方だけを招いたりする程度です。
ーー ポール・ボキューズさんは80歳超えても現役でしたし、50歳で引退すると明言して、実際、引退したジョエル・ロブションさんも復帰して現役ですので、もったいないです。もちろん、これは単なる個人的な感想ですけれど。そういえば美木さんは「トロワグロ」で働かれたのですよね?
美木 いくつかのお店で修行した後にトロワグロに面接に行きましたら、経歴を見てジャン・トロワグロがソース部門シェフに抜擢してくれました。非常にいい勉強になりました。
犬房 私はジャンムーランに1984年にはじめて行きまして、「海の幸のポトフ」という今では伝説の料理を食べましたが、ポトフのような煮込みではなく、魚介類にソースアメリケーヌのような濃厚なソースがかかっていました。あれはトロワグロ直伝だったのですね。
ーー お話だけでも、美味しそうです。美木さんは引退されてしばらく、カンヌの北にある町グラースで暮らしておられたそうですが、ワインは何を主に飲んでおられましたか?
美木 強い太陽の下の南仏で午後からボーッとしながら飲むには安物のロゼワインが一番ですね。
犬房 お店で何を飲もうか迷ったときにロゼはよいですね。「WINE-WHAT!?」でロゼの特集をしていましたが、面白かったですよ。
ーー ありがとうございます。今の時代、ワインの嗜好は多岐にわたっていますので、雑誌もその方向で多くの読者に応えなければ、と思っています。今日は酸化ストレスが漂白剤成分とわかりやすく教えていただきましたし、クラシックなフランス料理は低糖質で酸化ストレスを低減できる料理だとわかりました。読者のみなさまも、酸化ストレスを低減して、長生きをしてワインをもっと楽しみましょう。本日はありがとうございました。
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※本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。摂取量の目安を守ってください。
※4粒入りは2018年12月現在、販売を終了しています。