甘い玉子焼きとオムレット
ダヴ 何も高級なレストランで行うばかりがマリアージュじゃないんだ。身近にあるカジュアルな食材でどんどん試し、自分で納得していくのが醍醐味なんだよね。
アナ そして料理とワイン、どちらかが強すぎることなくバランスが取れれば最高。さて、ちょっとお腹いっぱいになってきたかな。次は玉子焼きに挑戦よ。店頭に行列ができているから、私たちも並んで買おう。
ダヴ 寿司にも出てくる玉子焼き? あの甘いオムレットかぁ。フランスでオムレットは甘くしないよなぁ。
アナ 串刺しだと、ハンディで食べやすいね。
しっとり優しい玉子焼き。
ダヴ オムレットを甘口に合わせることはないけど、この玉子焼きなら甘口ワインでも。
アナ アリ、だわ。優しい甘みのある白かしら。エビなどの具が入った甘くない玉子焼きもあるそうだから、そちらは辛口の白向きなんだろうけど。
ダヴ ところでさっきのウナギ串の店で、他の串の選んでテイクアウトしてたでしょ。何を買っていたの?
アナ メカジキ串。

ギッシリとした肉質のメカジキ串。
ダヴ 渋いね。
アナ これがまた、魚なのに、すごくニクニクしい。
ダヴ ニクニクしい?
アナ 肉っぽいの。ちょっと齧ってみてよ。
ダヴ あ、ほんとだ。肉々しい。
アナ フランスで食べる魚は、肉質が繊細なものばかり。印象がぜんぜん違う。
ダヴ 繊細な肉質をちゃんと味わおうとして、ローストしたら塩やレモンすら添えずに食べることだってある。
アナ となると、辛口白ワインしか選択肢はなかった。けれど、動物の肉のような噛み応えと旨味があり、さらにやや甘めのタレがついているし、途端に赤ワインを合わせたくなる。ボルドーは重厚な赤ワインばかりだとの先入観が強くて、軽めの赤があまり知られていないのは残念。メカジキ串には絶対、軽快でチャーミングなボルドー赤が似合うのにね。
ダヴ 築地に来てみて、魚とのマリアージュの世界がぐんと広がったよ。僕もマグロの寿司と甘口白の素敵な組み合わせに、自分でもびっくりしてる。日本のお寿司屋さんには、これから甘口ワインをどんどん置いて欲しい。
アナ なら私は、日本のウナギ屋さんに赤ワインを推薦しまーす。
