1917年に創業した「キンタ・ダ・カルサダ」はポルトガル、ヴィーニョ・ヴェルデ地域最古の生産者の一つ。4月、このキンタ・ダ・カルサダのワインが日本に輸入され、WINE WHATは試飲する機会を得た。
手頃で気の利いた新商品ポルトガルワイン
キンタ・ダ・カルサダをテイスティング
ワイナリーはルレ・エ・シャトーのホテルという名門
モダンでスッキリとしたラベルはヴィーニョ・ヴェルデの魅力だ。
ヴィーニョ・ヴェルデのすべてがそう、というわけではもちろんないけれど、シリアスなルックスをしていないのは、気構えなくていいよ、というワインからのメッセージだとおもう。
この4月、日本に輸入されたLAGOという名がついたヴィーニョ・ヴェルデの白とロゼは、まさにそういうワインだ。
造り手は「キンタ・ダ・カルサダ」という1917年創業のワイナリー。こちら、16世紀に建てられた宮殿を本拠地として、そこは、ホテルとしては、ルレ・エ・シャトーにはいっていて、レストランはミシュランガイドで1つ星。そこが造るワインという、身元がしっかりとしたワインだ。ワイン造りもヴィーニョ・ヴェルデのなかでは標高が高いアマランテ地域の特性を生かし、複数の自社畑のブドウを、完熟させてから収穫している、という真摯なスタイル。
だから、LAGOの白は、ヴィーニョ・ヴェルデを期待して選んで、間違いないワインだ。
微発泡でさわやかで、アルコール度数が10%というのも、ヴィーニョ・ヴェルデらしい軽快さを表現するにあたっては、シリアスになりすぎないギリギリのところではないだろうか。
さわやかながらも、物足りなさはなく、2019年ヴィンテージとのことで、必要十分に熟成されていると感じられる、まとまりのいい味わい、香り。酸ははっきりしているけれど、余韻に長く残るようなものではなく、複数の果実の甘酸っぱいイメージとともに、スッキリと終わる。
もう少し、酸味、甘み、渋味といった要素がほしいのならば、おなじLAGOのロゼを。
こちらはヴィニャオン100%。白と同じく2019年ヴィンテージ。
ヴィニャオンはヴィーニョ・ヴェルデではもっともよく栽培されている赤品種で、タンチュエリエと呼ばれる、皮をむいても果実が赤いブドウだ。普通に造れば、酸とタンニンが強くなりがちだけれど、このワインは、白ワインっぽく造っているのだろう。桜色と言いたくなる、とてもきれいなピンク色から想像されるとおりにエレガント。香りから赤い果実のちょっとスイートな印象がって、味わいにもうっすら甘いニュアンスがある。酸味と渋味はきちんとありながらも、まろやかに角をとられていて、心地よい。
両者とも、価格は1,760円と手頃だ。
ルックスが変わる赤とスパークリング
一方、ややシリアスなルックスの「ラーゴ ドウロ・ヴァレー レッド」は前述のふたつと比べると実際、すこしシリアスな赤ワインだ。試したのは、2017年ヴィンテージ。
産地は、その名にあるとおりで、ヴィーニョ・ヴェルデの南から東の方に向かって広がるドウロ。南方のダンとの比較で、ワインのスタイルがよりエレガントになりがちなダンをブルゴーニュに、リッチな傾向をもったドウロをボルドーに例えることがあるようだけれど、このワインの、酸味、タンニン、甘いニュアンスは、ドウロらしい、しっかりとした赤ワインの雰囲気というべきところだろうか。
とはいえ、ボディ感はあってもヘヴィーなワインではなく、爽やかさが両立している。
温度管理されたステンレスタンクで発酵後、フレンチオークとアメリカンオーク樽に分けて3カ月間熟成という、凝った造りで、赤身の肉はもちろんだけれど、白身の肉と合わせたい。価格は2,200円とやはり手頃で、同価格帯の南米の赤ワインではちょっとリッチすぎる、というシチュエーションに向くだろう。日常的にワインを飲む人にとっては、より万能なスタイルだ。
さて、赤・白・ロゼときたら欲しくなる、スパークリングもある。
こちらはLAGOではなく、ワイナリーの名を冠して「ポータル・ダ・カルサダ ブリュット」という。
ポルトガルでも、瓶内二次発酵の高品質なスパークリングワインはあるけれど、こちらは、タンク内発酵のシャルマ方式を採用しているため、ぐっと気楽で価格もフレンドリー。特徴的なのはまろやかな口当たりだ。酸味も泡も抑制が効いていて、そもそものブドウの質の良さ、醸造の丁寧さがうかがえる。
瓶内二次発酵を採用すれば、たしかに深みは増すだろうけれど、その分、長い熟成期間を必要として、ともすれば熟成が不十分で、まとまりがなく、泡のキメのあらいワインになりかねないし、価格も高くなる。
「ポータル・ダ・カルサダ ブリュット」は2,200円。デイリーでフレンドリーなスパークリングワインとして、シャルマを採用したのは正解だろう。
いずれのワインも、なんらかの要素が突出していることもクセもなく、バランスの良さが見事。こんなふうに、違和感を抱かせないワインを成立させるのは、高度な技術だ。控えめだからこそ、気が効いている。だから、かしこまったシチュエーションよりも日常の、あるいは気が置けない友達との食事に、すっと出すといいとおもう。ボトルのルックスがクリーンだから、テーブルをいい雰囲気に演出してくれることにも期待できるだろう。
輸入元:TYクリエイション
https://www.tycreation.com/product/other/quinta_calcada.html
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