ワイン的にいえばルーションに入る、ペルピニャンから内陸へ30kmほど。もともと生産者組合の使っていたワイナリーを、ホテルとワイナリーへと改装したのが、ドメーヌ・リーブラック。いまではほとんど見かけなくなった、部屋のような形のコンクリートタンクを、実際、客室にしてしまっているこちら。ワインを造っていたタンクの中に泊まれてしまうのだ!
ビオワインと美食の後はタンクの中でワインの夢を。小さな村の上宿
WINE WHAT オクシタニーの旅 その14
ドメーヌ・リーブラック(Domaine Riberach)
2 route de Caladroy 66720 Bélesta
Tel. +33 0468811473
www.riberach.com/
タンク改装の客室 195ユーロ~
タンク上階の標準客室 165ユーロ~
元 大型コンクリートタンクの客室
オーストリアに長らく住まう夫婦、リュック・リシャールさんとカリン・ピューリンガーさんは2人揃って建築家。
家、ビル、歴史的建造物のリノベーション、なんでもござれと活躍していたが、好きなワインを自分たちで造りたくなり、縁あってオクシタニーへ。ペルピニャンから車で30分の距離にある小さな集落で入手したワイナリーは、元は生産組合の所有だった。
一度に大量のワインを仕込めるよう、500ヘクトリットル容量のコンクリートタンクが65台も設置されていた超大型物件。1925年に建てられた石造りの家屋外観は残したいけれど、1軒分のワイン生産用としてはムダに広い……
「なら、タンクを部屋に改造し、宿泊施設にしてホテルを経営しよう」とのアイデアに行き着いた。
以前はワインで満たされていた空間が、今や人が寝泊まりをする客室に。決して、秘密基地めいた狭い部屋ではない。タンク2つ分のスペースを占める室内は天井が高く、白を基調としたインテリアで圧迫感はない。
庭園へ向かって大きなガラスの引き戸も設置され、ダイニングでワインを飲んでからベッドで寝転ぶころには、自分がタンク内にいることを忘れてしまう。
ブドウに任せながら雑味のないワインという神秘
醸造施設に割り振ったエリアでは、宿泊施設化にて持て余したタンクが、フル活用されている。樹脂製の小型タンクは衛生的な反面、温度管理に注意を払わなくてはならないが、温度変化のゆるやかなコンクリートタンクの内部に設置するだけで問題軽減。
温度調節のマシンを導入せずとも、野生酵母の働きだけで自然と健全なワインが造られるという。
そう、ドメーヌ・リーブラックのワインはビオである。さらに、ポンプなどのマシンも導入せず、ワインはフィルターも通さず、SO2添加も可能な限り減らす。なるべく手作業で進め、いや、ほとんど手を加えてすらいない。どの品種においてもブドウの生命力に任せっきりで、なのに一切の雑味を持たないワインが完成するのは、もはや神秘だ。
試飲スペース兼ショップもある。写真は、 リュックさんが命名した「仮説」という意味のワイン「イポテーズ」白。全世界に栽培面積がわずか15ha程度の絶滅寸前のブドウ品種、カリニャン・グリ種を100%使用。
「オーストリアに住んでいた私たちは、オーストリアワインの良さや違いを知っている」と妻のカリンさん。「だからこの地でも、オーストリアワインと共通するような繊細で可憐なスタイルを求めたくなるの。ほかの文化を知っているからこそ、ついオクシタニーでもエキゾチックな部分を探してしまうのかもね。」
夫のリュックさんは「ワインはパワーより繊細さ、ミネラルが重要ということ。ここは標高400メートルで、海も、スキーのできる山も50㎞圏内。太陽が強いから、ブドウの熟し過ぎに注意しなくてはいけないけれど、それは収穫のタイミングで解決できるのさ。」
ちなみに、以上のトークはカリンさんとリュックさんの娘、ゾエさんが通訳してくれた。日本語ペラペラのゾエさんに感謝!
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