唯一無二のワインには地場品種が欠かせない
博学なユベール・デ・ファラモンさんは、コメントが明快。
「ガイヤックの語源は雄鶏。昔、上質なワインとして認められると雄鶏マークが付けられた。今でいう品質保証システムだね」
「うちでは地場品種のブロッコル、デュラスなど扱うけど、ブロッコルは収穫が遅くてカベルネ・ソーヴィニヨンに近い。デュラスはメルローと同時期に収穫できて、性質を見ても従兄弟みたいなもの」
16世紀から続くシャトーに生まれたものの、若い頃は辛酸を舐めた。
第二次世界大戦後は家屋が火事で消失、資金はゼロ。父親とワイン生産に専念するも、卸業者へ樽売りすれば利益は少なく、輸送経路での品質管理にも疑問アリ。そこで、ガイヤックでは海外へ直接輸入する造り手が皆無だった時代、ネゴシアン勤務経験もあった彼は自らオランダやベルギーへ飛び、輸送ルートを確保した。
「シャトーを売却しなければならない瀬戸際まで行ったけど、『自分の代で潰すのは忍びない』と踏みとどまった。ボルドーの影に隠れがちなガイヤックワインだけど、海外で大歓迎され、心も支えられたんだ」
今後は地場品種のなかでも絶滅しかけたプリュヌラールに注力してみるという。
「ワインとしてうまくいくかは賭け。でも、モノづくりの人間として、ほかと違うものに挑戦するのは当たり前」
息子に代を譲りつつ、まだまだアクティブだ。