500以上の失敗の末に誕生した真・スパークリング日本酒
尾瀬の大地で濾過された清らかな天然水で仕込まれた「MIZUBASHO PURE」。シャンパーニュと同様クリアな輝きを持つこ
の酒が、今年11月、フランスのトップソムリエ達が審査する日本酒品評会「Kura Master 2020」スパークリング部門で最高賞を獲得した。
これが世界初の瓶内二次発酵のスパークリング日本酒だったことをご存知だろうか?
2008年に誕生した、瓶内ガス圧5気圧を超える正統派のスパークリング清酒。6代目蔵元の永井則吉氏は、それまで主流だった大吟醸での乾杯に疑問を感じていた。
食事のスタートには軽やかな泡が似つかわしい。そして、自分が造るならシャンパーニュに匹敵する酒にしたい。
2003年に開発に着手してから500を超える失敗を重ねる中、本物の造りを求めて2006年に渡仏。サロンとルイ・ロデレールの門を叩き、ポール・ロジェでは現場作業も経験した。
この地で学んだのは技術のみでなく、土地の人々のブランドや地域に対する誇り。帰国して更に試験醸造を繰り返し、完成した酒は、すぐに国際的なイベントの乾杯酒に用いられ、やがて世界に羽ばたく。エル・ブリ(エル・ブジ)、ナパのフレンチ・ランドリーなどトップレストランがオンリストした。
ロマネ・コンティの白ワインの衝撃を日本酒で
群馬県川場村に生まれ育ち、地域に根差した酒で、地域を表現し伝えようとする永井氏。だがその視線は常に世界をも捉えている。この価値観は、1 本のワインとの出会いによって生まれた。
20代の頃、酒造りを極めるにはワインを飲めと先輩に誘われ参加した会合。ここで口にした1988年DRCのモンラッシェは、同時に飲んだ5大シャトーの味を忘れるくらいの衝撃だった。繊細さ、透明感、そして熟成の素晴らしさ。これが、今なお続く熟成酒を極める旅路の出発点となった。
ワインのように時を経た深みのある味わいを、日本酒で実現したい。が、酸味も渋味も少ない日本酒はエレガントな味わいになる熟成が難しい。地下室に貯蔵するだけでは3年くらいでピークを迎える。
自身の酒の熟成には、マイナスの温度帯が適切だと探し当てるまで10年かかった。
10年以上の熟成を経て世に出す「水芭蕉VINTAGE」は、世界に向けて出荷され、フランスやアメリカで高い評価を得た。
8本セットで202万円!からのカジュアルライン登場
フレッシュな酒が好まれる今日、古酒・熟成酒の世界感は、古くて新しい。永井酒造含む7つの酒造が「刻(とき)SAKE協会」を設立し、古来の伝統ある熟成酒の文化を再興し、その価値を世界に発信している。各酒造が常温や冷蔵、それぞれの製法で熟成させた1984年から2003年仕込みの酒を1本ずつ、そしてこれらをソムリエの田崎真也氏がアッサンブラージュした1本の計8本「刻の調べ」を限定20セットで11月24日から予約開始。価格は設立年にちなみ202.0万円だ。
こうした高い価値の追求も楽しみ方のひとつだが、日常に浸透し、そして地元で愛される酒であるためにはカジュアルラインも欲しくなる。そこで生まれたのが「MIZUBASHO Artist Series」。
酒造の取締役で永井氏の妻である松美氏が、今、最も日本酒に親しんでいない消費者層、20~40代の女性に飲んで欲しいという思いを胸に商品設計した。清楚な水芭蕉をあしらったアートラベル、柔らかで飲みやすい味わい、売上の5%を尾瀬の自然環境保護のために募金する仕組みは、エシカルな意識に訴える。
スティルはフルボトル、スパークリングとデザートは小容量と、消費し切れるサイズバリエーション。手ごろな価格ながら、瓶内二次発酵ならではの泡の持続性ときめ細やかさを楽しめるスパークリングを入口に、日本酒の世界に遊びに来て欲しい。