この価格にしてこの仕事「エラスリス マックス レゼルヴァ」
「MAX RESERVA」はその歴史と今とこれからに手軽にアクセスできるシリーズだ。エラスリスが世界に誇るファインワインたちの、いわばセカンドラインに当たるものだが、親しみやすい価格帯でチリワインとエラスリスの世界の扉が開ける。
ラインナップされているのはチリを代表するブドウ品種、赤ワインではカベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、白ワインではソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ。基本は数々の名作を生みだしたエラスリスの本拠地、アコンカグア・ヴァレーで育ったブドウを使い「その特徴がよく出るワイン」を目指した。
カベルネ・ソーヴィニヨンはチリが世界に飛躍したアイコンであり、氏自身が「チリカベ」というカタカナを使うほど日本でも認知されてきたものでもある。だからこそ下手なものは出せない。いや、エラスリスだからこそ出せるワインを出さなければいけない。アコンカグア・ヴァレーの土地、マックスという区画のポテンシャル、この価格にしてこれだけ手をかけるのかという丁寧な栽培、収穫、醸造、熟成。
「エラスリスの哲学はピュア、フィネスです」という氏の言葉をセカンドラインからも知ることができる。またフレッシュさと丁寧さの両面を味わえる白ワインからはエラスリスの進取の精神がうかがえる。そのキーワードは「冷涼」と「沿岸部」。
「夏でも最高気温25度。太平洋から10㎞ほど入ったコスタは気候、シスト質の土壌など素晴らしいミネラルと酸が得られる場所。雨も少なくゆっくりゆっくり成熟する。ここで新しいワイン造りをしたかったのです」
沿岸部に広がるテロワールは、エラスリスがその時代で最適な回答を求めているというひとつのエビデンスだ。
ヴィーニャ・エラスリスの誇るファインファインたち
ファインワインのラインナップも同じようにその時代を切り開くものだった。
「ラ・クンブレ」。頂点という名を冠したシラー。1993年初ヴィンテージのワインは、チャドウィック氏の「チリならではの世界レベルのシラーを造る」という思いから生まれた。
アコンカグア・ヴァレーでシラー。最初は懐疑的な言葉もあっただろう。実際「当初、内陸部では単純にパワフルでスパイシーなシラーしかできなかった」と氏は振り返る。それが
尽力の末、コスタエリアで冷涼な北ローヌ、例えばコート・ロティのような氏が理想のひとつとする「しっかりとした凝縮感とピュアさ」というワールドクラスのシラーを生み出すことができた。ローヌとの比較を続けるのはあまり意味がないだろう。ローヌのように、ではなく、アコンカグア・ヴァレーのシラーの価値を、存分に感じられるワイン。それは初めて感じるシラーの新たな魅力であると確信する。
93年の氏の無垢な野望がシラー、「ラ・クンブレ」なら、2005年、カルメネール、「カイ」の誕生は、運命であり使命ではなかったか。
「カルメネールはもともとボルドーのものだったけれど成熟させる上ではアコンカグア・ヴァレーの環境が最適でした」
カイは現地の先住民の言葉で「植物」。チリのルーツの言葉を冠し、チリの誇りを世界へと広げていくという決意を感じさせてくれる。
「最初はセーニャとドン・マキシミアーノのブレンド用に造っていました。ブレンド用としても素晴らしいものだったのですが、これぞチリらしさのショーケースになると考えカイをスタートさせました」
そして2010年ニューヨーク。「ベルリン・テイスティング」の世界ツアーにおいて、その名を轟かせるナパ・ヴァレー、ボルドー、トスカーナのファインワインの中で1位を獲得。
「一時はなくなっていたと思われたカルメネールがチリでこうやって生きている。そして素晴らしいものであるということをこのツアーで知っていただきたかったんです」
というのが氏の願い。ファインワインとどう出会うか、どう楽しむか、それはあなたの手に委ねられている。
ベルリン・テイスティングとはなんだったのか
固執は、ワインを愛するものとしてネガティブな言葉ではないか。もっと自由に求めれば、その先に素晴らしい出会いが待っている。2004年に氏が仕掛けた「ベルリン・テイスティング」は、チリのファインワインを世界に知らしめる機会であると同時に、我々に固執という言葉を忘れさせてくれる痛快な出来事でもあった。
1976年、パリ。カリフォルニアワインがフランスワインに勝った日と語り継がれる「パリ・テイスティング」。だが氏が求めていたのは勝利ではない。
「攻撃的な活動ではなく謙虚さを持って、チリでも素晴らしいワインがあるということを知っていただきたいという思いでした」
その「ベルリン・テイスティング」の世界ツアーで、フランス、イタリアのファインワインの中で常に上位に位置し、チリワインの存在を知らしめたのが「ドン・マキシミアーノ ファウンダーズ・レゼルヴ」だ。これぞ、エラスリスの総合力というワイン。アコンカグア・ヴァレーのテロワールとエラスリスの哲学が結びついた宝物。そしてこの成功したワインにもエラスリスは変化と進化を恐れない。実際それを続けてきた。
「コアは大切。それはピュアさとフィネス。それを大切にしながら新しいテロワールの発見、気候変動に対応していくでしょう」
創立者ドン・マキシミアーノが描いた150年前のヴィジョンはどんなものだったのか?味わうたび思いを馳せてしまう。
最後に150周年を迎えたエラスリスを代表し氏が日本に贈る言葉。
「今まで愛してくださって感謝しています。今、チリのワインは日本では数量的には認知されています。次の段階は、世界と比べても遜色のない素晴らしいクオリティのワインがあることを知ってもらいたい。それを味わっていただける、その機会をエラスリスが提供できることでしょう」