フェッラーリ無くして、トレントのスパークリングワインは無し
今日、ワイン愛好家の中でフェッラーリを知らない人はいないだろう。
シャンパーニュと同じ伝統製法で造られる、イタリアを代表するスプマンテ。イタリアンのある特別な日の食卓や御祝い事には欠かせない、ハレのスパークリングワインーーそんな、世界的認識は、すべてひとりのパイオニアからはじまった。
ジュリオ・フェッラーリ、その人である。
シャンパーニュやドイツのガイゼンハイムで修行を重ねながら、彼は故郷トレントに適合する新しいワイン造りを求め続け、新たなワイン産業を確立しようと
志向していたのである。
そして、ついにエペルネでシャンパーニュ製法にめぐり合う。彼は、「トレントのテロワールの方が、シャンパーニュよりも優れたシャルドネを育む」と確信。シャンパーニュと同じメトド・クラシコ製法を用いたスプマンテメーカー、フェッラーリを設立した。1902年のことである。
ジュリオ・フェッラーリは、100年以上昔からサスティナブルを志向していた大先達、というわけである。
後継者のいなかったジュリオは、トレントのワインショップのオーナーだったブルーノ・ルネッリ氏を後継者に任命。以降フェッラーリは、ルネッリ家の人びとによって、創業者の意志をさらに広げるかたちで継承され続けている。
創業者の確信が現実のものとなる
現在フェッラーリは、年間生産量およそ550万本。メトド・クラシコ製法で造られたイタリアのスパークリングワインの20%、トレントにおいては85%のシェアを誇る。年間輸出量も、世界50カ国へおよそ70万本を数えるまでに成長している。
地域を代表するワイナリーだからこその矜持は、「ワインの歴史はブドウが育った土壌の歴史である」というフィロソフィーだ。
フェッラーリのみならず、ルネッリグループがもつすべての自社畑はオーガニック認証をけ、農薬の不使用、除草剤の不使用はもとより、持続可能な農業のために、自然な方法で畑の治癒力を高める処置をおこなっている。
600を超える契約農家もまた、グループが作った「持続可能で環境に配慮した山岳部でのぶどう栽培に関する議定書」を遵守することが義務付けられている。これは、畑の土壌を守ることばかりを志向しているわけではない。畑で働いている人やその家族、さらには近郊の地域全体の環境を、農薬や除草剤の害から守ることこそ、この取り組みの最も大きな目的なのだ。
その土地に生きる人びとへの配慮と、環境保全が、結局は質の高いブドウを育み、繊細でバランスが取れた高品質のワインが生み出され、食やシーンを彩る文化を育み、持続可能な経済活動にも結び付いていく。サスティナブルの理想のかたちが、ここにある。
こうした活動から生み出されるワインは世界でも高く評価され、2019年には、世界で最も権威あるスパークリングワインのコンペティション「シャンパン&スパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップ」において、過去最多の15のゴールドメダルを受賞。コンペティション史上初の3度目の世界一生産者に選ばれている。これは、名だたるシャンパーニュのグランメゾンをおさえての快挙であった。
必ずやトレントは、シャンパーニュを凌ぐ産地になるーー 創業者ジュリオ・フェッラーリの確信が、現実のものとなったわけである。
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「サスティナブルワインのある生活」