今回はこの3ソムリエ
矢野航さん(上右)
横浜馬車道トラットリア ダ ケンゾー ソムリエ
第10 回JETCUP イタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクール優勝経験をもち、駐日イタリア大使館公認のイタリアワイン大使もつとめる
田邉公一さん(上左)
ソムリエ ワインディレクター
レストランやワイン関連会社のワインセレクション、ドリンクアドバイザーを務め、ワインを中心に、イベント監修やコメンテーター、プロモーション活動も。
櫻井一都さん(下中央)
大井町 ロスビノス オーナーソムリエ
2007 スペインワインコンテスト優勝経験をもち、スペインワインを中心とした、ワインセミナー、ワイン選定、ワインリストの作成などのコンサルティングも。
まずは蒸し暑さを吹き飛ばしてくれるシチリアのグリッロ
櫻井 矢野さんのワイン、なんだか涼やかなボトルですね。
矢野 これは、シチリアのセッテソリという協同組合で造っているワイン。共同組合なので、サステイナブルな農業は重要で、ワインの造りからも愛を感じます。スクリューキャップで扱いやすいし、ライムグリーンを用いたボトルデザインも爽やかでしょう?
夏の蒸し暑さを吹き飛ばしてくれるようなワインですから、テラスやアウトドアでも楽しめます。
田邉 味わいも、見た目のような感じですか?
矢野 グリッロの品種特性がよく出ています。柑橘系のニュアンスがあり、青パパイヤのようなフレーバーも。マロをかけていないのでしょうね、キレのある爽やかな酸味が特徴です。よく冷やせば、暑い季節にも気持ちよく飲める、まさに「夏ワイン」!(笑)
櫻井 おつまみがまた美味しそう。
矢野 トスカーナに「トンノ・エ・ファジョーリ」というツナと白インゲン豆をオリーブオイルで和えたサラダがありましてね、それを応用しました。
カンパチのカマを焼いてほぐして、ヒヨコ豆と玉ねぎを和えて……シチリアのワインなので、レモンの皮を散らしてシチリア風に。カンパチ・ファジョーリ、いや、ファジョーリ(白インゲン豆)でさえないのか(笑)
櫻井 流石、ワインと料理のコメントが巧いですね。すごくイメージがわきやすい。レモン風味がグリッロにすごく合いそうです。
田邉 シチリアのグリッロというと甘いのかな?というイメージですが。
矢野 ドライです。さわやかさの後ろに、ナッツとまではいかないのですが、かすかな香ばしさがある。これが、飽きずにゴクゴク、いくらでも飲めるポイントかもしれません。
レモンやマンダリンなどを思わせる柑橘系のアロマに、爽やかな花の香りや青パパイヤのニュアンスが彩りを添える。味わいはフレッシュで、ミネラル感が豊富。心地よい余韻が、比較的長く続く。除梗後にクリオマセレーション(5-8℃)をおこない、ステンレスタンクで発酵させたことに由来する爽やかな酸味も魅力。前菜やサラダとは全般的に相性抜群。マリネした海老・イカなどの魚介類、グリル野菜や白身肉などにも。
このワインは、食トレンド発信メディア「おうちごはん」が、ペアリングを提案してくれています。
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汎用性の高いシュペートブルグンダーのロゼ
矢野 田邉さんは、また色の綺麗なワインを……
田邉 テッシュという造り手のドイツのロゼ。ナーエのナーエ川の近郊のワインです。シュペートブルグンダー100%。
櫻井 ピノ・ノワールですね。
田邉 夏には格好の爽やかな味わいに仕上げられていて、ロゼというよりブラン・ド・ノワールのようなイメージです。しかし、味わいの中にはしっかりとピノ・ノワールのニュアンスがあって、赤い果実に若干のスパイス、フレッシュでドライ、爽やかな味わいですが、かすかに茸のニュアンスなどもあります。
矢野 夏向きワインとして見事なチョイス。
田邉 大々的に謳っているわけではないですが、オーガニックワインで、身体にスッと沁み込んでいくような印象です。夏場はなにかとストレスがたまりがちですから、こういう造りのワインが心身にうれしいですね。
櫻井 おつまみは?
田邉 餃子とポテサラ。ドイツワインなのでポテトサラダが合うかなと。また、このポテサラには野菜がたくさん入っていて、それが有機的なピノのニュアンスととても相性が良い。
櫻井 餃子の中身は?
田邉 もち豚です。ポークということでソーセージとの共通項もあるし、皮の食感は、ドライなロゼとよく合います。
矢野 この生産者は甘口を辞めたことでも有名ですよね。僕はよくお客様にロゼをすすめるのですが、大半の方に「甘いのでは?」といわれてしまう。甘くないものも多いのに。
田邉 ドイツのロゼも大半がドライで、ファルツなどピノ・ノワールの産地でよく造られています。冷涼なので、そもそもロゼ向きの産地が多いのです。ピノの要素をきちんと持ったロゼは、料理との汎用性も高く、重宝すると思います。
赤系果実のアロマに、若干ブラックペッパーなどを思わせるスパイスのニュアンスも。全体の印象としては、ドライで、爽やか&フレッシュだが、その背景にはかすかに、酵母やキノコ、スモーキーフレーバーなど複雑な印象もたたえている。ロゼというよりも、ブランドノワールのようなイメージが強いのは、冷涼な気候条件に由来する綺麗な酸のゆえか。旨味豊富なシャルキュトリ、豚肉料理、点心などに合わせたい。
ボリューミーな食事とも合う、コクのある白
櫻井 私はスペインの代表的なオーガニックワインの造り手から選んでみました。ライマットのオーガニック ヴェンターダ。
カタルーニャのワインで、ガルナッチャ・ブランカ100 %。私は、この品種は、カタルーニャワインに親しむうえで、いぶし銀的な、外せない品種だと思っているのです。
田邉 ほう?
櫻井 カタルーニャワインの入り口は、やっぱりカヴァでしょう。スティルワインも、このスパークリングワイン用のブドウ、チャレッロ、マカベオ、パレリャーダなどの品種で造られることが多いのです。特に白は。ガルナッチャ・ブランカという品種は、カタルーニャの内陸で多く造られているのですが、カタルーニャワインの世界により深く入っていくためには、必ず経験するべきぶどうだと、私は思うのです。
矢野 思い入れが深いなあ(笑)
櫻井 少しコクのある味わいの白なので、冷やし目でも美味しいですし、少し温度があがっても楽しめます。カタルーニャ地方のボリュームのあるおつまみがおすすめです。
矢野 例えばどんな料理を合わせます?
櫻井 カタルーニャ風のブイヤベースであるサルスエラや、パエリアなどの魚介。淡白な肉料理、たとえば鶏などにもよく合わせます。
田邉 今回は?
櫻井 バルセロナの名物にビキニというホットサンドがあるのですが、それにしてみました。
その名の通りビキニパンツ型
地元ではハムとチーズ、ゴージャスなお店では生ハムを挟んだりしますが、今回は、パンにマスタードとバターを塗り、サラダチキンととろけるチーズを挟んで焼きました。
田邉・矢野 美味しそう!
櫻井 大人の軽食ですが、夜中には危険。コロナ太りに拍車がかかってしまう(笑)
緑がかった淡いレモンイエローの色合い。洋梨や白桃などのふくよかな香りに、パイナップル、シトラス、ハーブなどのアロマも。時間が経つとジャスミンティーやスモーク、バニラなどの複雑なニュアンスも。ミネラルは繊細で心地よく、酸味はおだやかで、ボリューム感のある味わいなので、前菜系から魚介、フライなどボリュームのある料理まで幅広く対応。鶏、仔豚、仔牛などと合わせてもユニークなマリアージュに。