ジョセフ・ペリエは今、若い世代によって静かに変革の時を迎えている
ただし、年間生産本数は約80万本と他メゾンに比べて規模が小さく、フランスでは星付きレストランや高級ショップでしか扱われない。おかげで、シャンパーニュ通にはよく知られていても、世間一般にはまだまだ奥ゆかしき存在だ。
「ジョセフ・ペリエのシャンパーニュを自分で買って初めて飲んだ時、フレッシュな味わいにとても驚いたのを覚えています」と語るのは、そのジョセフ・ペリエでシェフ・ド・カーヴの任に就き3年目を迎えたナタリー・ラプレイジュさん。シャンパーニュ業界に身を置き、数多くのシャンパーニュを飲んできた彼女だが、ジョセフ・ペリエのフレッシュさはひと際鮮烈な印象を残したという。しかし実際、熟成期間は法律で定められた月数をどのアイテムも大幅にオーバー。長期熟成ながらフレッシュさを失わないのは、ステンレスタンクのみ使用し酸化を極力排除する努力の賜物である。
拘束時間が長く体力も気力も必要とされるシェフ・ド・カーヴだけに、すべてのメゾンを見渡しても女性は珍しい。40代前半と若い人物もまた稀少。さぞ野心家だろうと「何歳頃からシェフ・ド・カーヴを目指していた?」と質問を投げたところ、ナタリーさんは困惑した表情を浮かべた。「いつからかな……うーん、気付いたらシェフ・ド・カーヴになっていた、としか」。横に座る取締役のオットー・プシュビラさんが助け舟を出した。「ナタリーがこの職を選んだというより、周囲の人 がナタリーを選んだのです。ナタリーは自分を前面に出す性格ではありません。それはジョセフ・ペリエというメゾンも一緒で、うちは営業担当がいない。イギリス王室御用達になったのだって、営業担当が画策したのでなく、王室関係者が時間をかけてこっそりリサーチした上でうちを選んでくれたから。縁っていうのは、自然と構築されるんですよ」。
生まれも育ちもシャンパーニュ。中学への通学路は、ちょうどジョセフ・ペリエのメゾン前を通るルートだった。ランス大学で生物学と醸造学を修め卒業、2か所のメゾンで研鑽を積んだのち2017年より現職。2019年、シャンパーニュ専門誌が毎年1人だけを選ぶ最優秀シェフ・ド・カーヴ受賞。最近、空手にハマっている(帯はオレンジ色)。
ナタリーさんは入社直後、他メゾンで廃れてしまった伝統製法がジョセフ・ペリエで守り継がれている事実に圧倒されたという。職人気質の強いブランドだと覚悟はしていたが、ルミュアージュから何から手作業にこだわるスタッフたち。とはいえ頑固な人間はおらず、若い女性シェフ・ド・カーヴが突然仲間入りしてもコミュニケーションは円滑。オットーさん曰く「小さいメゾンだから上下関係なんてない、お互いの能力を尊重し合うだけです」。
じつはナタリーさん入社とほぼ時を同じくして、メゾン当主も父から若い息子へ代替わりした。クラシックでフレッシュなジョセフ・ペリエは今、若い世代によって静かに変革の時を迎えている。コンスタントに飲み続ければ数年後、きっと貴方もスタイルの進化に気づくだろう。
ジョゼフ・ペリエ ミモザ・プロモーション2020 開催
国際女性デーの3月8日は、すべての女性に捧げるミモザの日。「MIMOSA FESTA」は今年で21回目の開催が予定されていたが、イベント自体は残念ながら今年は中止になってしまった。
しかし、ジョセフ・ペリエは毎年このイベントをサポート。今年もミモザをあしらった特製のグラスとシャンパーニュがセットになった「ミモザ仕様」を発売した。
また、今回来日したナタリー・ラプレイジュさん、オットー・プシュビラさんはこのミモザ・プロモーション実施店を精力的に回り、あるお店ではボトルにサインをし、あるお店ではディナーに参加して一般のお客様と交流して、各店舗のイベントを盛り上げてくれた。
来年はイベントも盛り上がると思うが、ジョセフ・ペリエはもちろん、ミモザ・プロモーションを開催予定とのこと。2021年3月8日が今から楽しみである。