Welcome to SCOTLAND。劇中、ボンドと共に行動するある人物が、絶体絶命、窮地の中、笑顔で敵に放つその一言が痛快だった。
ダニエル・クレイグ演じるボンドシリーズで、ボンドの苦悩、ルーツ、そこに抗う誇りといった内面が切なく描かれる作品が「スカイフォール」だ。
ダニエル・クレイグ版ボンドにおいては、重要なボンドのルーツとしてスコットランドが描かれる。
では酒の世界でスコットランドを象徴する存在と言えば? それはやはりスコッチ・ウィスキー「ザ・マッカラン」ということになるだろう。
スコットランドという地が重要なカギとなる「スカイフォール」にマッカランが登場するのは必然だ。しかも苦悩に寄り添う場面、生死を分ける場面に登場する。1962年、「50年物のザ・マッカラン」がスクリーンに現れるのは、史上最強レベルの適役との非情なまでの命のやり取り(このロケ地が長崎・軍艦島というのが日本のファンとしては嬉しい)。
だが同時に思った。50年物の珠玉のヴィンテージのマッカランを味わうなら、生きてきた幸せをかみしめ、じっくりと向き合いながら味わいたい。そう、極上のボルドーを味わうように。その時、マッカランとワイン好きが自然に結びつく理由も思い浮かぶ。
スコットランド・ハイランド地方東部のスペイサイド。スコッチの故郷として代表的なこの土地から190年以上の長きにわたってシングル・モルトウィスキーの魅力と価値を伝え続けてきたマッカランが守り続けてきたこだわり。そのひとつが「樽」の存在だ。
使用するのは「オーク樽」。それも ワイン好きには親しみ深いシェリー樽だ。仕入れから加工、焼き、熟成とすべての工程でマスター・オブ・ウッドの熟練と厳しい眼によりチェックされた樽のみが使用される。
原料、水、蒸溜技術、そのすべてが重要で、その上で、最終的なマッカランとしての色味と味わいを決めるのは樽の品質。想像してみよう。ボルドーの丘で育ったブドウが樽ひとつで台無しになってしまうという状況を。すべてが調和して初めてボルドーワインとなる。同じようにスペイサイドの恵みが、オークのシェリー樽に思いと哲学と共に込められて「ザ・マッカラン」という名を冠することができるのだ。
「ザ・マッカラン シェリーオーク18年」をグラスに注ぐ。オン・ザ・ロックスでいこう。シェリー樽で18年間熟成された原酒が、美しい氷の上を静かに滑れば、マホガニー色が生命の喜びを思い出したかのように一瞬明るく輝く。
アロマと味わいはエレガンスとエキゾチック、そして強さ。長く力強い余韻が、また次の複雑なアロマと味わいを呼ぶ。すると強さはやさしさに変わり、そのやさしさの奥からまた強さが現れる。
恵み、熟成、喜び。「スカイフォール」で描かれたのは悲しみと復活。きっとボンドのその悲しみと復活の間に、マッカランはあったのだろう。
マッカランの美味しい楽しみ方
2017年のベストバーにも選ばれた麻布十番のオーセンティックバー「Bar-le-Hulotte」のオーナー・バーテンダー、川瀬彰由さんは「初めて飲まれるのであれば、まずはストレートをオーダーして、シェリー樽の風味を存分に感じて味わってほしい。