アイラ島のテロワール
シングルモルトの魅力は、蒸留所ごとの個性が際立つことだ。スコットランドの地においてもエリア、スタイルで大きく個性が違う。中でも存分に表現してくれるのがアイラ島。そしてアイラ島において強烈な存在感を放つのがアードベッグだ。
ワイン好きにおいては、アードベッグは、異次元の酒、かもしれない。グラスに注いだ瞬間にそれとわかるほど印象的だ。その要因は鮮烈な、しかし味わいと深みのあるスモーキーさと、海辺にいるかと錯覚するほどのヨード香。ワイン好きに伝えたい。この2つの個性は、まさにテロワールの産物だ。
アイラ島には荒々しい波が打ちつける。その土地の1/4以上がアードベッグにスモーキーさをもたらす泥炭(ピート)で覆われる。海の近く、それもアイラだからこそ。これを生かしてさらに旨みと深みをもたらす技術を重ね、世界が構築される。ワインと共通した物語だ。
強烈だからこそ、違う個性と結びつくと新たな魅力が生まれる。アードベッグの神髄「アードベッグ 10年」を味わったらオロロソ樽を使った「アードベッグ ウーガダール」、ペドロ・ヒメネス、アメリカンオークの新樽を使った「アードベッグ アン・オー」を。甘み、緩やか、エキゾチック。荒々しい海と静かな花園の入江が同時に目の前に広がる。ファンタジーの世界。
アードベッグは、土地とその土地を生かす知恵と喜びを教えてくれる。香りと味わいの向こうの物語まで、じっくりと楽しもう。