アニェス・パケさん。
50年代に家族が手に入れた畑で、長い間、他の栽培農家に貸し出されており、アニェスさんの両親は売却しようと考えていた。しかし「自分がブドウ栽培をするから」と両親を説得。かくしてドメーヌ・アニェス・パケの立ち上げが2000年。初ヴィンテージは2001年だったという。
その後の買い増しや賃貸耕作によって、現在の耕作面積は13ヘクタール。オーセイ・デュレスのほか、お膝元のオート・コート・ド・ボーヌ、それにポマール、シャサーニュ・モン ラッシェ、サントーバンにも広がっている。
セラーの中に各年の収穫開始日が記された木の板が。2019年は9月14日。
新世代の造り手らしくブドウ栽培は自然を尊重し、2004年から除草剤の使用を止め、認証こそ取得してはいないものの、事実上有機農法を実践する。
オーセイ・デュレスという知名度の低いアペラシオンながら、ワインの質はすこぶる高い。味わったのが18年という温暖な年のせいかもしれないが、白は繊細さとふくよかさが両立されて、早くから心地よく楽しめ、赤は果実味柔らかく、酸のバランスもとれたエレガントなスタイルである。
またアリババと40人の盗賊をもじった「アリ・ボワ・ボワ」という発泡性ワインも醸造。ユーモアセンスにも優れた造り手だ。
左はサントーバン・プルミエ・クリュ・レ・ペリエール(2016年は7,900円)。石灰石の欠片がごろごろ転がる畑で、塩っぽいミネラルの感じられる、余韻の長い白ワイン。右はシャサーニュ・モンラッシェ・レ・バトード(2015年は9,200円)。モルジョの下に位置する粘土の強い土壌。トロピカルフルーツの香り が顕著でリッチな味わいだが、酸のテンションも十分。