ところがバイクで事故を起こしたのを機に、本人いわく「ふと、ワインを造ってみたくなった」そうで、父と伯父が相続したブドウ畑を引き継ぎ、オート・コートのアルスナン村にドメーヌを構えたという。
オリヴィエさんのワインのスタイルはとてもはっきりしている。色調が濃く、みっちりと果実の詰まった凝縮感に富み、タンニンまで熟してビロードのような舌触りをもつ。
「ブルゴーニュが繊細でエレガントというのは間違っている。完熟したよいブドウから造れば、自然と濃厚なワインになるんです」。
オリヴィエさんは完熟を待ってブドウを摘む。それにはブドウの健全さがなによりも大事といい、ドメーヌ継承後から有機農法を貫いている。
赤ワインの醸造法も独特の手法をとる。近年はワインにフレッシュ感や複雑味を与えるため、除梗せず、房のまま発酵を始める全房仕込みをする造り手が増えている。しかし房のままだと内側に病気が発生していてもわからない。そこでオリヴィエさんは、一旦除梗して茎を洗い、ブドウの実と2割ほどの茎を互い違いに発酵タンクに入れて醸造する。
エレガント派ばかりが勢いを増す昨今、こうした濃厚なワインの造り手もいなくては困るのである。