フランスのエスプリとイギリスのテロワール
すでに百花繚乱のイギリススパークリング市場から、続いて紹介するのは、「へネス・ヴィンヤード」である。
もともとは、「フォーミュラ1」の技術者であったローレンス・ウォーが、次なる夢への挑戦としてイーストサセックス州に土地を購入し、個人で設立した小さなワイナリーだった。
まだ英国スパークリングが無名だった2007年。フランス、ローヌを拠点にワイナリーを運営し、優れた小規模生産者を見出すことで定評のある「ブティノ」が注目。自社の、最高醸造責任者エリック・モナンを送り込み、植樹から改良に携わる熱の入れようだ。
海の近くに位置する畑は、急勾配の南向き斜面。品種ごとに別々に醸造し、ブレンドした後、最短でも3年以上の瓶内熟成を経てリリースされる。
誕生から10年後の2017年には、ブティノがワイナリーを買い取り、さらなる品質向上に挑み続けている。その結果、現在では世界的なワイン評価誌「デキャンター」でも賞賛されるまでに急成長を遂げている、期待の存在だ。
世界中のジャーナリストや愛好家が今、もっとも期待するスパークリングワインの新たなる聖地。しかし、マー
ケットを熟知する企業や醸造家は、すでにその秘められたポテンシャルを見抜き、力を注いでいたのである。