
リオハの畑。よりテロワールの表現に力を入れ始めている。©CONSEJO REGULADOR DOCa RIOJA
単一畑、村名、ゾーン表記に
リオハは19世紀後半、フィロキセラの害から逃れてきたボルドーの生産者によって樽熟成技術が伝えられ、活性化していきました。リオハといえば、樽熟成感をかけたクラシックな造りで、樽の香りと果実味、熟成のバランスが売りでした。
19世紀にはリオハ・アルタのアロという町にも鉄道が開通しました。この町が輸送の拠点となり、バスクやマドリッドにリオハワインが運ばれていき、リオハワインは知名度を上げていったのです。
2000年代前後からは、世界的に果実味豊かなタイプが好まれるようになり、海外市場を意識した造りをするようになりました。それまで大樽を使って長期熟成していたのが、小樽で短期熟成のものが増え、果実味がもてはやされるようになりました。
さらに単一畑でワインを造ったり、ベンハミン・ロメオ氏、テルモ・ロドリゲス氏、アルバロ・パラシオス氏といった伝統品種にこだわる造り手たちが現れて、注目されました。
2018年2月には「リオハ特選原産地呼称委員会規則」が改定され、「単一畑」「村名」「3つのサブゾーン」をラベルに表記できるようになりました。それまでリオハでは、リオハ中のブドウをブレンドしていたのですが、今はブルゴーニュ的な考え方になり、テロワールを重視し、地域に誇りをもった生産者が増え始めています。
2018年の改定で、3つのサブゾーンのうちの「リオハ・バハ」は「リオハ・オリエンタル」と改名されました。同時に、「サブゾーン」は単に「ゾーン」と呼ばれることになりました。「バハ」は「低い」という意味ですが、リオハ・アルタの標高とさほど変わりません。「リオハ・オリエンタル」は「東側のリオハ」という意味ですから、より正確な呼び方になったわけです。
ちなみに、アルバロ・パラシオス氏の実家のワイナリー「パラシオス・レモンド」はアルファロというリオハ・オリエンタルの一番東の町にあります。

赤、白、ロゼ、伝統からモダンタイプまで楽しめる。
グラシアーノ、グラシアスに
リオハの補助品種として有名なグラシアーノは酸が強く、熟成用にテンプラニーリョとセットになって欠かせないものでした。
ところが温暖化のせいか、グラシアーノ自体の酸味が低くなり、まろやかになってきています。味わいはカシス、スパイスの完熟した香り。赤い果実の余韻も長く、カオールのような、濃い品種です。今では単一畑のグラシアーノ100%が造られるようになっています。
例を挙げるならリオハ・アラベサの「コンティノ」。ここは歴史ある生産者で古くから単一畑、単一品種を造っています。
テンプラニーリョも酸度が下がっているので、グラシアーノの比率を上げている生産者もいます。技術力のアップと気候に順応した結果といえそうです。
リオハはテンプラニーリョ、ガルナッチャが主役で、グラシアーノは主役の陰に隠れていました。「昔はグラシアーノはノーグラシアスだった(笑)」という生産者のオヤジギャグ的な話が忘れられません。
リオハ・アラベサはリオハ・アルタより歴史的にもスタートが遅く、隠れた秘境です。
一方、リオハ・オリエンタルはこれからという地区。リオハ・アルタは知名度のある生産者がラベル表示が変わって、より高品質なものを造るというモチベーションが上がっているのではないでしょうか。
リオハは世界中のジャーナリストから、「バリュー・ワインの聖地」 といわれています。こんなに品質が高くて、熟成も長いのに、こんな価格で手に入るのか、と。しかも熟成はずっとワイナリーという安心感。これがバリューたるゆえんで、リオハの底力がわかります。