ファミマはワインづくりに力を入れている!
神楽坂を登り切ったところにあるイタリア料理店、ラストリカートの1階は、長テーブルの並ぶ、気軽なイタリア酒場というイメージだった。満席のゲストを前にリリー・ファツィオさんがあいさつしたあと、「フェウド デッラ・マーレ ネロダヴォラ」誕生の立役者のひとり、伊藤忠商事の麻生康介さんが、こう語った。
「今回ファミリーマートさんのワインを選ぶにあたり、イタリアのなかで一番広い領土を持った州で、地中海の最南端にあるシチリア島、そこでつくられたワインなら想像するだけでも美味しそうだな、と。なかでも、トラパニというシチリア島の北西部にあたるところで、4代も続いてワインづくりをやっているファツィオ社の商品をファミマで扱えるのはありがたいと思っています。
ファミマは、ワインづくりに力を入れています。もはやコンビニワインは、コンビニワインという言葉ではくくれないほど、レベルの高いものになっていると思います。
ワインに限らず、これを機にコンビニで扱っている食品のレベルの高さを今一度、皆さまにこういった機会を通じてお伝えしていければ、と思っています。
その前に、ファツィオ社の素晴らしいワインを楽しみましょう」
ということで、まずはファツィオ社の白ワイン2種を楽しんだ。最初は、シチリアを代表する白ブドウ品種のカタラット100%で、シチリアというと、『太陽がいっぱい』かと思いきや、意外と冷涼感がある、と記者は思った。D.O.C.エリーチェの海抜300〜350メートルの畑のブドウということがキモかもしれない。ソーヴィニヨン・ブランにちょっと似ているけれど、ソーヴィニヨン・ブランではないので、ちょっと違う(当たり前ですね)。
2番目は、これまたシチリアを代表する土着品種グリッロの100%。グリッロは、シチリアの有名な酒精強化ワイン、マルサラワインのベースにもなる。
そのグリッロでつくられた白ワインは強い黄色で、成熟したフルーツ、たとえば白桃、洋梨のニュアンスがあり、酸味のバランスがいい。魚料理にピッタリ、とリリーさん。
ほのかにライチの香りがして、ゲヴェルツトラミネールにちょっと似ているかも……と記者個人は思った。配布された資料のテイスティングノートには「エキゾチックなニュアンスのフルーティな香りと、エキゾチックなフルーツの味わい」とある。
この2本に合わせる料理はこんな感じだった。
この後、ロゼをはさんで、注目の「フェウド デッラ・マーレ ネロダヴォラ DOCシチリア」がサーブされるちょっと前に、前出の伊藤忠商事の麻生さんと、ファミリーマートのワイン担当で、ソムリエの資格を持つ齋藤拓也さんが記者たちのテーブルにやってきて名刺交換した。
「まずはワインの素晴らしさをみなさんに伝えたいと思っています」と商社マンの麻生さん。
ファミマの齋藤さんは控えめで寡黙だった。その代わり、というべきか、麻生さんが熱く語った。
「これから出てくる赤ワインがファミリーマートで取り扱いになっています。ネロ・ダヴォラ第2弾。非常にレベルの高いワインです」
さらに、隣の齋藤さんを見ながら、こう続けた。
「齋藤さまのようにワインのセレクションをされている方は珍しい。世界中、どこのワインを選ぶかも重要です。斎藤さまも、コンビニにこられるお客さまを、どうワイン・ワールドに引き込むかを考えてセレクションされている。コンビニワイン、非常にレベルが上がってます、とみなさんに支えてもらえたら」
それから、麻生さんとは旧知と思しき某メディアの記者に、「肩を揉みましょうか」と言って、コンビニワインの企画を持ちかけた。面白い記事になりそうなので、記者はそれを読みたいと思った。
品質にはこだわり、値段には競争力
2人が席に戻った後、リリーさんが立ち上がって、「ファウド デッラ・マーレ」について紹介した。
「スペシャルゲストの『フェウド デッラ・マーレ』です。ファミリーマート、ジャパン・ソルトとのコラボレーションから生まれた息子みたいな存在ですので、みなさま、よろしくお願いします。
ようやく紹介することができます。ネロ・ダヴォラ100%のワインです。原産地DOCシチリアのブドウからつくられています。ブドウ自体も厳しく選んでいます。
シシリアのことを思い出せるような、独特のラベルです。
ファミリーマート、ジャパンソルトとともに、品質にはこだわりがありますが、値段的には競争力があるようにしました。
ネオ・ダヴォラ100%なので、赤果実系、黒すぐりとかの香りです。スパイスのニュアンスも感じられます。深いルビー色も楽しめます。ビロードみたいな舌触りも楽しめます。
いろんな料理に合わせることができます。イタリア料理ではピッツァ、和食だったらうどん、野菜の天ぷらにもよく合います。
美味しいワインです。ベルリン(の国際ワインコンクール)で金賞を受賞しました。
では、ファミリーマートとシシリア、『フェウド デッラ・マーレ』に、みなさまで乾杯しましょう」
ネロ・ダヴォラは、シチリア島原産の土着品種であると同時に、シチリア最高の赤ワイン用ブドウ品種とされる。非常に力強いワインとなる、ということだけれど、これまた海抜250〜300メートルの畑のブドウゆえか、あっさりしていて飲みやすい。資料には、「エレガントで滑らかな飲み口」とある。それでいて、品種の特徴であるベリー系の豊かな味わいがある。甘みと酸味。タンニンは控えめながら、ちょこっと苦味もある。
1本もらって帰ったので自宅で後日、飲んでみたら、梅干しのニュアンスもある。
「すぐれたワインのためにはすぐれたブドウが必要です。ブドウを植えるにあたっては、標高、地質、風向きなどを研究しています。水は雨だけに頼っています。水分が豊富に含まれている地質なのでブドウの木が健康に成長できるのです。有機栽培で、農薬は一切加えていません。シシリアにはブドウが自然に生えていた。そういうシシリアで強い品種を植えています。ですから、農薬を使わなくても、栽培することができます。それと、ブドウ畑にはバラを植えています。バラがダメになったら、ブドウもダメになる、とわかるからです」とリリーさん。
記者のテーブルにはこのワインにかかわった卸問屋の日本アクセスのひとたちが3人並んでいて、彼らがラベルのデザイン等を手掛けたのだそうだ。ファミマが販売するネロ・ダヴォラ第2弾は、ファミマだけでなくて、ジャパンソルト、伊藤忠商事、それに卸問屋の日本アクセスのプロジェクト・チームのコラボレーションから生まれたものなのである。
もちろん、ファツィオ社が日本サイドの要求に応えられなければ成立しない話だけれど、あの膨大な商品が並べられているコンビニの片隅に置かれているワインに、いろんなひとたちがワインに対する並々ならぬ情熱を持って臨んでいることこそ、日本のワイン市場における光明なのではあるまいか。コンビニ・ビジネスの競争の厳しさよりも、このプロジェクトに対する彼らのワイン・ラブが記者には頼もしく思えた。
リリーさんが彼女の赤ワインに語った後、ジャパンソルトの東京支店長・鳥海明伸さんが補足した。
「値段を言うのを忘れてしまいました。(ファミマの)斎藤マネージャー、(伊藤忠の)麻生さんにご協力いただいて、税込でなんと998円、と。消費税の荒波にも負けず1000円を切るのが味噌でございます」
オオッというどよめきと拍手が会場から起きた。
初代のネオ・ダヴォラは本体1500円だったそうで、税込998円に決まるまですったもんだがあったらしい。10月21日に導入して、お店にはすでに2万本納入しているという。というようなことは、卸問屋の日本アクセスの担当者でソムリエの資格を持つ本川貴浩さんから教えてもらった。
「2代目は中身もまったく新しい。いろいろブレンドしながら、価格も考えて、味は、齋藤さんも含めて、チーム全員で。ネロ・ダヴォラは高いイメージがあります。ネロ・ダヴォラのなかではかなり安い」と本川さん。さらにこんなことも語っていた。
「コンビニワイン、高いものは(売るのが)難しいけれど、ワインの品揃えはけっこう揃ってきています」
後日、ファミマに行ったら、ワインのコーナーに、この赤いラベルの「フェウド デッラ・マーレ」がちゃんと置いてあった。998円とお手頃価格なので、1本買って編集部に戻り、みんなで飲んだら、「美味しい」とたいへん評判がよかった。そのまま飲んでもイケるので、みんなでワイワイはもちろん、ひとり、お家でボーッとしながら楽しまれてもよいのではないでしょうか。
ファミマ専用以外のファツィオ社のワインは、神楽坂にあるジャパンソルトのアンテナショップ「ドルチェヴィータ」で販売されている。シチリアワイン好きのかたは、ぜひお試しください。