酸がしっかり感じられ、冷涼感があり、緻密でエレガント
そもそも同社代表のハルさんこと新井治彦さんが、スペインワインに目覚めたきっかけは?
「僕は25年間ずっとブルゴーニュワインを追いかけてきました。ヴォギュエのミュジニーなんて何本売ったかわからないくらい。ところが、ブルゴーニュワインがとてつもなく高くなってしまい、それに変わりうるワインを探していたら、スペインと出会ったんです」
90年代末から2000年代に、いわゆるスーパースパニッシュのムーヴメントを迎えたスペインだが、現在世界中から注目されているワインは、それら濃厚なタイプとは一線を画すと新井さんはいう。
「酸がしっかり感じられ、冷涼感があり、緻密でエレガント。エル・ブジ(ミシュラン三つ星を獲得したレストラン)のフェラン・アドリアの影響が大きかったのでしょうね。スペイン料理が世界一洗練されたものになり、ワインもそれに合わせて進化しました。2006年にプリオラートに行った時はワインがあまりに濃すぎて、二度とここには来まいと思いましたが、『テロワール・アル・リミット』の登場で目が覚めましたよ」
それでは主要なブドウ品種ごとに、今が旬のスペインワインを聞くことにしよう。まずはスペインを代表する品種のテンプラニーリョから。
「王道でリオハになるけど、冷涼感を追い求めるとリオハ・アラベサの北部。『テンテヌブロ』のロベルト・オリバンは祖父の時代の造りを踏襲して、アヘンクージョなんて誰も知らない品種が入ってたりする」
では、ガルナッチャなら?
「ガルナッチャはスペイン全土で栽培されているけれど、ジャミーになりやすい品種で、エレガントなワインを見つけるのが難しい。この5年くらい噂になっているのがグレドス山脈のガルナッチャ。花崗岩土壌やスレート土壌から素晴らしくエレガントなワインができています」
新井さん、お気に入りの品種は?
「メンシアですね。僕がスペインワインを本格的に始めるきっかけになった品種。でもよい造り手を選ばないと、美味しいメンシアには出会えない。おすすめの造り手はもちろんラウル・ペレス。ピノ・ノワールにシラーをブレンドしたようなニュアンスがいいですね。冷涼感があって、タンニンはとてもシルキー」
カタルーニャのチャレッロは日本食とばっちり
白品種についてもうかがおう。
「スペインの白というと、以前はルエダのベルデホがまず挙がったけど、僕はあまり好きじゃない。ソーヴィニヨン・ブランと何が違うのかわからない。やはり個性的なのはガリシアのアルバリーニョ。造りに支配されるシャルドネとは対極の、テロワールを反映する品種だから。
それからもうひとつ挙げるなら、カタルーニャのチャレッロ。酸が高く、アルコール低めで、日本食とばっちり。チャレラー(チャレッロ好きの人)は今後ますます増えると思うな」