オトナノイザカヤ中戸川
〜王道の1本を炙りシャコのお浸しと〜
旬魚のお造りや肉じゃが、土鍋ごはんと一緒に、トリッパのトマト煮や手打ちパスタがメニューに並ぶ。
すべてアラカルトで定番、季節のおすすめ合わせて約50種。有名イタリア料理店で腕を振るってきた店主・中戸川弾さんが、ジャンルにとらわれず旬の旨いものをあれこれ食べたいという大人のわがままを叶えるべく、2013年に開いた居酒屋だ。
当然、イタリアワインも充実のラインナップ。なかでも和食に合わせて薦めるのがプロセッコ専門の造り手、「ニーノ・フランコ」社のスタンダードキュヴェ「ルスティコ」だ。
「ほんのり甘いタイプ、ナチュラルな濁り系とプロセッコのトレンドも変遷を遂げているけれど、時代に流されず極辛口のスタイルを守っている生産者。余分な甘み、果実味を削ぎ落した味わいが、繊細で透明感のある和食と非常によく合います」と、ソムリエの伊禮達哉さん。
炙りシャコと焼き茄子のお浸しと合わせれば、淡い素材の風味と透明感のある出汁の味わいに寄り沿ってくれる。揚げ物とは鉄板の相性だが、稚鮎とヤングコーンの天ぷらと合わせれば、香ばしさに加え、ほろ苦さも甘みも受け止める懐の深さだ。
3年前、店の隣に系列店「キガルニワショク弾」を開くに当たり、和食の料理人、金子太一さんを迎えた。以来、和の一品の提案や素材使いにも、ますます磨きがかかったと評判。精度の高い和食と王道をいくプロセッコの相乗は、自由で奥の深い店の料理と酒の提案を体現している。
29 Rôtie
〜クリーミーな泡がスパイシーさとぴたり〜
さまざまなスタイルの店が誕生し、ここ数年でかなりアップデートされた感のある東京の“居酒屋”だが、「29ロティ」は、その先駆け。
切りたての生ハムとタンドールで焼く肉料理が主役で、酒はナチュラルワインと純米酒。前例のない店を8年前にオープンし、ワイン好きと日本酒好きの垣根を取り払って来た。
ワインも日本酒も選ぶ基準は同じで、「食中に向くこと」。結果、ワインはイタリア産が中心に。店主の江澤雅俊さんいわく「乾杯から通して楽しめ、料理を引き立てるプロセッコは、うちの店のお客様にも人気が高いんです」とのことだ。
なかでもビギナーにもワイン好きにもウケがいいと推すのが「シルヴァノ・フォラドール」の一本。
「シャンパーニュ的なニュアンスもあるブリュットナチュール。バランスが良く、和食やエスニックなどいろんな料理とマリアージュします」
例えばヨーグルトとスパイスで漬け込んだタンドリーチキンと合わせれば、クリーミーな泡がまろやかなスパイシーさとぴたり。ここ最近、肉に加えて力を入れているのが、発酵食品などを使ったマニアックなつまみ。アンチョビバターの居酒屋的解釈としてメニューに加えたへしこバターと合わせても、生臭くならず、濃厚な旨みを引き立てるのだとか。
繊細な和食とだけでなく、ややパンチのあるスパイス系つまみ、クセのある発酵系つまみともご一緒に、というわけ。プロセッコの奥深さを改めて確かめられる。
とり口
〜すっきりめの泡をイタリアンな焼鳥と〜
「焼鳥とワイン」の組み合わせはもはやスタンダードと言っていいが、ワインを扱う焼鳥店の中でも、ややイタリア色が強めなのがこちら。
厨房とサービスを合わせた全スタッフの内、半数がイタリア料理店での勤務経験がある。イタリア修業経験がある人もいる。つまみも、パルミジャーノやリコッタなどイタリア産チーズを使った一品あり、からすみを使った玉子料理あり、という具合。
日本酒酒場の繁盛店「それがし」の系列店。ゆえに日本酒も充実、ワインはイタリア産に限らず、フランス、ニューワールドと幅広く揃う。産地に関わらずフォーカスするのは、焼鳥と好相性のスパークリングワイン。シャンパーニュから日本の泡までボトルで8種が揃うなか、常時ラインナップするのが「カーサ・コステ・ピアーネ」のプロセッコ。
その立ち位置を、ソムリエの先崎大樹さんは、次のように説明する。
「シャンパーニュならピノ・ノワール主体と、リッチなラインナップのなか、すっきりめの泡をお好みのお客様におすすめする1本。澱引きをせず瓶詰めをする自然派の造り手で、軽快でありながら、果実感、旨みも十分。焼鳥やつまみと合わせることで、豊かな表情を見せてくれます」
焼き手は中目黒「鳥よし」出身の西口和樹さん。コースで8本の串が供されるが、「店の味を決める」と話すかしわ、つくねからスタートする辺りに、経験と自信がうかがえる。「焼鳥とワイン」を一歩進めて、「焼鳥とイタリア」を楽しめる一軒。
ワインバー葵
〜すこぶるドライな1本をチーズ料理と〜
新目白通り沿いのマンションの2階。目立つ看板などが出ていないため、一瞬、通り過ぎてしまいそうになるが、地元の人々に愛されるワインバーである。
オーナーソムリエの小林喜孝さんがセレクトするワインは、日本ワインを中心に、フランス、イタリア、カリフォルニア産など約300アイテム。開業した2010年当時、まだまだ扱う店が少なかった日本ワインに光を当て、プロの視点で諸外国のワインと比較・提案しながら、丁寧に紹介を続けてきた。
進歩が目覚ましい日本ワイン、王道のフランス、個性派のイタリア……というカテゴリーの中で、スパークリングの定番として紹介するのが「ランティカ・クエルチャ」のプロセッコ「マティウ ブリュット」。
「チャーミングすぎるきらいがある最近のプロセッコの中で、香りは華やかながら味わいはすこぶるドライ。アペリティフから食中までお楽しみ頂ける一本です」
つまみは、チーズプロフェッショナルが選ぶ高品質なチーズと、月替わりのチーズ料理が推し。「マティウ ブリュット」と合わせるなら、マスカルポーネを使ったイチジクの白和えでフルーティーさを掛け合わせるもよし、トウモロコシのガレットでクリスピーさを相乗させてもよし。
ほかにもフレンチやエスニックベースのつまみからドライカレーやジェノヴェーゼうどんなどの食事までフードメニューも豊富。食前食後のバー使いはもちろん、ワインと食事をゆっくり楽しんでも満足できる。