目、耳、鼻をフル稼働して楽しむワインのテーマパーク
ワイン文化の要を担ってきたフランスのボルドーに、新たな名所が加わった。ユネスコ世界文化遺産に登録されたボルドーの歴史的建造物とは打って変わった、メタリックな外観。そこは、ボルドーだけでなく世界中のワイン情報が集結するワイン総合文化施設「ラ・ シテ・デュ・ヴァン」だ。流れるような形状は、グラスのなかで揺れるワインや、施設のすぐ脇を悠々と流れゆくガロンヌ河の渦をモチーフとしている。施設の中身は、常設展示スペース、ワインショップ、レストランなどなど。年間来場者数 万人以上を見込んでいるが、まずは建設工事を長年見守ってきたボルドーっ子たちが真っ先に足を運び、スタートは上々とか。
常設展示のテーマは〝ワインの多様性〟。とはいえ、小難しい顔をしたワイン愛好家ばかりが集まるわけではない。インタラクティブな仕掛けが盛りだくさんの展示は、ワインの知識ゼロでもすんなり楽しめてしまう。さらには子供向けにラベル画やコルクをテーマとしたワークショップなども開催され、家族揃っての訪問も大歓迎なのだ。
次のバカンス旅行先はぜひ、ボルドーも候補に。「朝は世界遺産の旧市街を散歩し、昼前にはラ・シテ・デュ・ヴァンへ入館、展示を見てお土産も買って、夜は街のワインバーへ」。ワイン三昧の1日って最高!
展示コーナー以外もワイン尽くし
「ワインとは何か?」との疑問に真っ向から取り組んだのが、「ラ・シテ・デュ・ヴァン」の正体だ。3000m²の展示空間では、様々な視点や分野からワインを満遍なく掘り下げている。イギリスのバーチャル・デザイン集団「キャッソン・マン」によるビジュアルの巧みさで、世界中のワイン産地を旅したような気分にさせてくれるし、ひと通り観て周った後には、ワインの文化的価値、物質としてのワインをすんなり理解させてもくれる。なにしろ、全てのブースで聴けるオーディオを繋ぎ合わせると 10時間に及ぶとか。情報量がハンパ無い。
一時はイギリス領であったことから、対外へのワイン貿易を強く意識し、同時に諸外国の文化や人を受け入れる土壌が培われてきた、港町のボルドー。「ラ・シテ・デュ・ヴァン」は、ボルドーに生まれるべくして生まれた象徴的な総合施設なのである。
イベントも続々、ボルドーは世界最大のワイン観光都市に
ボルドーのワインイベントといえば、2年に一度開催されるワインと美食の祭典「Bordeaux Fête le vin ボルドーワイン祭り」が有名だ。ちょうど第10回目の節目を迎えた2016年の開催日は、6月23~26日の4日間。ガロンヌ河沿いの会場内には産地やメーカーごとのワイン・ パヴィリオンが立ち並び、試飲パスと専用グラスを手に立ち寄っては様々なワインを注いでもらう観客で賑わった。試飲以外にも、ワイン講座、樽製造の実演、ライブ演奏、ワイン騎士団の行進、と内容は盛りだくさん。また、毎晩11時からはボルドー商工会議所の壁を使ったプロジェクションマッピング、11時半からはフランスのトリコロールをあしらった花火が打ち上げられ、世界各国から集まったワインファンを喜ばせていた。
このほかのイベントとしては、「メドックマラソン」も見逃せない。毎年9月に行われ、日本人も多数参加。給水ポイントならぬ給〝ワイン〟ポイントが人気で、選手は思い思いの仮装姿でワインを身体に補給しつつ、ブドウ畑の脇を走り抜ける。
逆に、あえてイベント時の混雑を避けるのも悪くない。ボルドーには前述の「ラ・シテ・デュ・ヴァン」のほか、旧ワインセラーを改造した「ワインとネゴシアン博物館」があり、街中には「ワインバー・ストリート」と呼ばれるほど店が集結しているエリアも。いつ訪れたとしても、ボルドーではワイン旅行を十二分に満喫できるのだ。