シャルドネのポテンシャルを知り尽くしたメゾン渾身の1本
多くの醸造家たちがプライベートでも楽しんでいるというシャンパーニュ×日本料理の組み合わせ。こちらはすでに、日本人ワイン・ラヴァーの間でも定番だ。
しかし、日本人にとってはシャンパーニュ×中国料理とのマリアージュのほうが意外で新鮮ではないだろうか? という仮説のもと、「赤坂璃宮 銀座店」を訪ね、ベストマッチの料理を提案してもらった。
長い歴史に裏打ちされた多彩な料理法を誇る中国料理。なかでも、「医食同源」を謳う広東料理は、食材を繊細かつ大胆に使いこなすことで、世界中の美食家たちを魅了している。
さらに、同店ではさりげなく油やスパイスを控え、やさしく穏やかな風味に。高い技術で仕上げられた印象的な一皿と心地よく行き届いたサービスで、長年通うファンが多い名店だ。
ここに登場したのは1964年に創業したシャンパーニュ・ジャカールの「ブラン・ド・ブラン 2013」。
伝統と現代の洗練された雰囲気の調和をビジョンとして掲げ、一度味わえばクオリティ追及への真摯な取り組みがわかることから、躍進が各国で注目されている。ノン・ヴィンテージでさえ3~4年の熟成を経て出荷する同社がもっとも大切なアイテムと位置付けているというミレジメ・シャンパーニュは、コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュのシャルドネのみを使用。
比率は、40%アヴィーズ村、35%シュイイ村、15%クラマン村、10%オジェ村となっている。
1000以上の優れたブドウ生産者との密な関係から高い品質を維持し、シャルドネのポテンシャルを知り尽くしたメゾン、渾身の1本なのである。
味わいについて、副支配人でシニアソムリエの佐藤恵美さんはこう話す。
「キレが良く、しっかりドライ。でも、上質なシャルドネならではの旨みと厚みを感じました。だから、やさしいだけではなく適度なスパイス感のあるお料理を合わせると、互いの個性がいっそう引き立ちます」
シェフやサービススタッフ全員でテイスティングし、決定したのは「鳥の辛味焼き」と「活車海老のスパイス揚げ」の二皿。
前者は、一晩かけて鶏肉にスパイスと調味料を馴染ませ、艶やかに皮目を焼きあげた贅沢な一品。パリッと香ばしい皮のクリスピーな食感にきめ細かい泡の刺激、シャルドネのコクがジューシーな肉の旨みと香辛料のソフトな辛みをたっぷりと包み込む。
後者は、プリプリの海老の緻密な肉質に、カイエンペッパーやジンジャー、アーモンドスライスや香菜の茎などを加えたパン粉をまとわせて供する。幾重にも重なる香りや食感、素材それぞれの主張をワインの伸びやかな酸がさらに引出し、長い余韻へと続く。
繊細さや儚さと力強さ。一見相反するような要素が共存するのがこのブラン・ド・ブランの魅力である。
食材や香辛料、独特の調理方法ゆえに、一皿に盛り込まれている要素が多い中国料理と合わせることで完成するダイナミックなマリアージュ。シャンパーニュ・ラヴァーならぜひ、この新たな世界を体験してみて欲しい。