やってきたのは浅草橋
水新菜館のマスター、田原加南子ちゃん、K。
水新菜館
東京都台東区浅草橋2-1-1 tel.03-3861-0577
営業時間 11:30-15:00,17:30-8:45
定休日 日曜、第2・第4土曜
「なら可南子ちゃん、テニスの後にサクッと飲みに行こうよ。あ、中華は好き? カジュアルな店なんだけどさ」と、柔らかい口調ながら有無をも言わさぬKに連れられ、やってきたのは浅草橋。
可南子「浅草?」
K「浅草橋」
可南子「んーと、浅草?」
K「……橋!」
可南子ちゃんにとって、銀座より東は未踏の地。都営浅草線に乗ったのも今日が初めてだとかで、浅草と浅草橋の違いを知らないのも無理はない。
それより、『水新菜館』のディープな看板を前に困惑するかと思いきや、「私がプライベートでよく行く香港みたい!」と可南子ちゃんのテンションが上がり、Kはニンマリ。
K「この店はワインの持ち込みができて、俺、よくワイン会をやるんだ」
可南子「持ち込み料は?」
K「ひとりあたり1000円ポッキリ。5人で100本持ち込んでも、ひとり1000円」
可南子「(ここは笑うとこなんだろうか。でもKさんとは、まだそんなに親しくないし……)」
少しクールになった可南子ちゃんが水新菜館のレトロなドアを開けると、名物のあんかけ焼きそばをズルルッとやっつけて帰る客がカウンターにひしめく。その奥のテーブルに「RESERVED」の黒札が。
ロゼと小籠包
香港旅行中はいつも点心三昧という可南子ちゃん。「小籠包は、食べ方を変えるだけで味わいも変わってくる」とマスターに伝授してもらい、目からウロコ。「ヤバッ、何個でも食べれちゃう」
「いらっしゃーいKさん、テーブルとっといたよー、あんら、カワイイお嬢さんと一緒♪」と出迎えてくれたのは水新菜館のオーナー、通称“マスター”の寺田規行さん。彼のキャラは日本版ウィッキーさんと思ってもらって間違いない(昭和な人にしか分からないぜ)。
K「マスター、今日は俺、ロゼ持参。これに合うオススメの料理をよろしく」
可南子「なんと、そういうオーダーができちゃう店ですか」
K「ここのマスター、ワイン詳しいのよ」
マスター「さすがKさん、かなり上級なロゼをお持ち込みで。どんな料理とも合わせやすいワインだけど、まずは小籠包かなぁ。お嬢さんは小籠包好き? てか、お嬢さん、お名前は?」
可南子「田原可南子といいます」
マスター「じゃ、カナちゃんって呼ぶね♪」
K「俺のことは、ユウちゃんって呼んでいいよ♪」
マスター「……Kさん、常連だけど下の名前は知らなかったわー」
ウンチクは流行らない
エスタンドン アンソランス Estandon insolence
生産国/地域:フランス/プロヴァンス
品種:グルナッシュ、シラー
希望小売価格:3,000円
エスタンドンは、ワインもボトルもスタイリッシュなロゼワインを専門に手掛ける南仏の協同組合。ワイン名は「生意気」という意味。
マスターに突き放されたKが、気を取り直して可南子ちゃんに話を振る。
K「日本って、ロゼワインがなかなか流行らないよね。でも欧米へ撮影取材しにいくとさ、カフェやレストランではみんな昼からロゼをガンガン飲んでる」
可南子「なんで、日本で流行らないんですか?」
K「ロゼでウンチクを語るニーズがないから、かも。でも、使い勝手は最高なんだ。じつは日本酒を飲み続けるとき、酒米や造りの違う日本酒へ移る前にロゼをひと口飲むと、口中がほどよくリセットされる」
可南子「オトナですねぇ」
K「今度、和食屋さんへ行って一緒にやってみよう。そしたら、ロゼのウンチクも語れるよ。プロヴァンスって産地はロゼの一大……」
マスター「はい、小籠包おっまちどうさま! うちの小籠包は、大ぶりで肉汁たっぷり! でも、れんげは使わない。説明するね、箸で上からまっつぐ刺して持ち上げれば、ほーら、皮が破れないでしょ。そして、下からちょっと齧って汁を啜る」
可南子「ホント、肉汁ぜんぶ味わえちゃった。こういう小籠包のウンチク大好き」
K「うん、うん」
可南子「ワインのウンチクは、ちょっと苦手だけど」
もうワインを語るのはやめよう、と遠い目をする写真家Kであった。
油脂分のある中国料理はロゼ、白、赤にかかわらずワインとの相性抜群だ。可南子ちゃんとKは小籠包(4個1,050円)のほか、肉巻き、酢豚、あんかけ焼きそばまで平らげて、テニス疲れから完全回復!
田原加南子さんの近況はinstagram@kanakotaharaをフォロー!