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ペリエ ジュエの最高醸造責任者 エルヴェ・デシャン独占インタビュー

「ブラン・ド・ブラン」と「ブラゾン ロゼ」の古式ゆかしきシルエットのボトルは単に昔のボトルの復刻ではない!

「ペリエ ジュエ ブラン・ド・ブラン」 と「ペリエ ジュエ ブラゾン ロゼ」の日本国内でのプロモーションのために、2019年4月に来日したシャンパーニュの名門ペリエ ジュエのセラーマスター、エルヴェ・デシャン氏にWINE-WHAT!?が単独インタビュー。

クラシックだけれどスマート

エルヴェ・デシャン Hervé Deschamps
ペリエ ジュエ最高醸造責任者。1956年生まれ、フランス・シャンパーニュ地方出身。
科学と農学を学び、ディジョンで醸造学、農業工学の学位を取得。食物科学についても学んだ後、1983年に発酵セラー担当として、ペリエ ジュエに入社。1993年4月、引退した前任者のアンドレ・バブレに代わって、ペリエ ジュエの最高醸造責任者となる。

多忙ななか、今年に入りすでに2度目の来日を果たしたエルヴェ・デシャンは、「ベル エポック」をはじめペリエ ジュエのシャンパーニュ造りを統括する最高醸造責任者である。彼がその大役を26年間担い続けているのは、卓越した技術力を持つだけでなく、穏やかな笑みを絶やさない人格者でもあるからに違いない。

そんなエルヴェが来日する際には、ちょっとしたトピックスをお土産に、またはヒネリのあるイベントを仕掛けてくるのがお約束のようになっている。今回は???

エルヴェさんの傍らに置かれた「ブラン・ド・ブラン」「ブラゾン ロゼ」のボトルをひと目見てピンときた。ボトルのシルエットが以前と違う! 時代をひとつ遡ったような、古式ゆかしきシルエットに変貌していた。

「この伝統的なボトルの形状は高貴なイメージがあり、わがメゾンにとって一種の遺産なんです。ボトルデザインを一新するにあたり、私もいろいろ意見を出しました」

単に昔のボトルを復刻しただけではない、と?

「かたちは変わらないのですが、じつは重さが昔と比べて軽い。輸送時に排出するCO2問題に対処するための改良です」

さすが、クラシックだけれどスマート。ペリエ ジュエが造るシャンパーニュのようではないか。

とはいえ、近年は地球温暖化の影で、ブドウ自体の性質もだいぶ変わってきた、と取りざたされている。

「温暖化の影響を一番受けやすいのは、シャルドネです。ちょうど花が咲く春に霜がおりると、結実不良を起こしやすい品種なのですが、40~50年前と比べると霜害が少なくなってきています。
反面、パイナップルやパッションフルーツなど、トロピカルでエキゾチックな香りが出てきやすくなりました」

それはまた、シャンパーニュらしからぬ香りのような……。

「そうなんです、アロマの点で温暖化はネガティブですね。ブドウを過熟させると、ときに自己表現がオーバーになってしまう。発泡性のワインは、テロワールに由来するすべてのアロマを泡が高めてくれるという特質があります。ブドウ本来の香り(アロマ)は後から修正がきかないから、収穫のタイミングでコントロールせねばなりません」

実際、以前は9月中旬から始まっていた収穫期が、2018年は8月末スタートにはやまった。新世界では、より標高が高く涼しい畑を手に入れて解決することもできるが、生産エリアの限られているシャンパーニュでは、それがままならない。おかげで現在は、成熟が遅い樹を選別するなどシャンパーニュならではの研究も進行中だとか。

とくにペリエ ジュエのシャンパーニュは、ブラン・ド・ブラン、ロゼにかかわらず総じてフレッシュさとエレガントさが際立つ。シャルドネにおいても、ブルゴーニュのようにボリューム感たっぷりなスタイルを追い求めはしない。

「シャンパーニュ地方とブルゴーニュのシャブリ地方とは、距離にして250kmほど。シャンパーニュのシャルドネ栽培地もシャブリと同じく石灰質土壌が中心ではありますが、そもそも土壌の成り立ちが違いますし、また気候も違います。シャンパーニュは夏でも夜は涼しく、結果としてミネラルと酸が豊かになるんです。独特の酸が、シャンパーニュにエネルギーを与えてくれている、と私は考えています」

ワイン初心者には酸が苦手な人も少なくないが、酸をフレッシュさと解釈できるワイン通には大絶賛される。フランス本国でも、「フローラルで、口のなかで存在感がある」と、シャンパーニュの枠を超え、ひとつのワインとして語られることが多いのだとか。

ペリエ ジュエ ブラン・ド・ブラン(左)
シャルドネ100% 参考価格13,400円
「牡蠣や塩茹でしたカニなど、海の幸とは相性抜群です。先日、生姜の効いた上海ガニと合わせたら、これもまたピッタリ」(エルヴェ)

ペリエ ジュエ ブラゾン ロゼ
シャルドネ25%、ピノ・ノワール50%、ピノ・ムニエ25% 参考価格8,500円
「ローズ色に合わせ、仔牛や仔羊をロゼ色に仕上げた料理と合いますよ。日本なら、マグロの赤身をさっとあぶった1品と」(エルヴェ)

飲み手に心地よい喜びをもたらすため、シャルドネに必要なのはチャーミングさ。そのベースをふまえて、エルヴェさん率いる醸造チームは、アイテムによって同じシャルドネを使い分ける。

「たとえば、クラシックラインのブラン・ド・ブランと、フラッグシップであるベル エポックのシャルドネは、パーソナリティが違います。それぞれにストーリーがあり、全体の調和のなかでシャルドネに求められる個性が変わってくるわけです」

一度じっくり、ペリエ ジュエのシャンパーニュと向き合いたくなってきた。ボトルがスタイリッシュなので、ついついプレゼントやホームパーティの手土産向きと思いがちだけれど、やはり自宅でひとり飲みがベターなのか……。

「いいえ! シャンパーニュのよさは、その世界観を誰かとシェアできるところです。ひとりで飲むより、ぜひ、どなたかと一緒に。手土産にしても、プレゼントとして相手に差し上げっぱなしでなく、一緒にシェアする前提がベストですよ」

最後に。アメリカで、ペリエジュエはイニシャルをとった「PJ」の愛称で親しまれている。フランスでは、PJと呼ばれない?

「フランスでPJというと、司法警察(Police Judiciaire)のほうがメジャーなんですよ。刑事物のドラマとかでよく耳にしますから(笑)。アメリカ人はジュエという発音がしづらいので、PJでいいんですけど」

お国事情で呼び名が違う、とのことでした。

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