ボルドーのシャトーと同じように
近代カリフォルニアワインの父、故ロバート・モンダヴィの次男であるティム・モンダヴィが、30年にわたりワイン造りを担ってきたロバート・モンダヴィ・ワイナリーを離れ、自身のブランドを立ち上げたのは2005年。その名前は「コンティニュアム・エステイト」。ラテン語で「継続」や「継承」を意味する「Continuus」に由来するという。
コンティニュアムのコンセプトは明確である。ボルドーのシャトーと同じように、ひとつのプロパティーから1種類のワインのみを造ること。
これは完全なる家族経営だったロバート・モンダヴィ・ワイナリーが上場企業となって以降、「商品レンジの無闇な拡張により、フォーカスがぶれたから」と考えたティムの決断であった。かくして、コンティニュアムが造るのは、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランを主体とし、プティ・ヴェルドやメルローをブレンドしたボルドースタイルの赤ワイン1種類とじつに潔い。
設立当初はかつてロバート・モンダヴィのリザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨンや、ボルドーのシャトー・ムートン・ロスチャイルドとコラボレーションするオーパス・ワンにも使われた、オークヴィルにあるト・カロン・ヴィンヤードのブドウを購入していた。
この銘醸畑の大部分は現在もロバート・モンダヴィ・ワイナリーの所有だが、同ワイナリーを買収したコンステレーション・ブランズが、モンダヴィ家との関連性を完全に失うことは商業的に得策でないと考え、ティムが好きな区画のブドウを買うことを許したのだという。
しかしその一方、ト・カロン・ヴィンヤードのブドウでは、自分の思い描く理想のワインは出来ないことに、ティムは気がついていた。彼が目をつけたのは、ナパ・ヴァレーの東の山間に位置するプリチャード・ヒル。2008年からブドウ畑を2年かけて購入し、徐々にワインにブレンドされるプリチャード・ヒル産のブドウの比率を高めていった。2012年以降はこの土地で収穫されたブドウのみ使用する、正真正銘のエステイト・ワインとなっている。
「プリチャード・ヒルは標高410~490メートルの高地にあり、土壌は表土が浅く、鉄分の混じった赤褐色のローム層で、とても痩せています。その結果、ヴァレーフロアのブドウと比較して、房も粒も小さく、凝縮感に富みながら、ミネラルやフレッシュ感を備えたブドウになるのです」と、約束の地を見つけたように語るティム。
今回はオークヴィルのブドウのみから造られたセカンドヴィンテージの06年、それにプリチャード・ヒルの自社畑のブドウもブレンドされた09年、そしてプリチャード・ヒル100%
の14年と16年の4種類を比較試飲した。
06年はリッチで力強く、ナパの赤ワインとしては文句のつけようのない一級品だが、やや荒削りな印象も否めない。
しかしながら、ヴィンテージが若くなるにつれて果実の風味がピュアに表現され、緻密なストラクチャーを備えながら、研ぎ澄まされた洗練度も感じられる。
16年はアルコール度数が15.1%にまで達しながら、ある種のフレッシュ感さえ覚える仕上がりだ。
ヴァレーフロアではピラジンが生じて使えなかったメルローも、涼しい山の上なら良好に熟し、08年以降のワインにブレンド。これが口当たりの柔らかさを生んでいるに違いない。
また06年では100%だった新樽比率は現在3分の2まで抑えられている。
「タンニンの質がよいので、新樽に頼る必要はありません」とティム。
コンティニュアムはエレガントなワインへと進化を続けている。