「タレント」は世界中のワインの平均より上
ブラジルといえば、サッカー、サンバにボサノバ、アマゾン、農産物ではコーヒーが浮かぶけれど、まさかワインを造っていたとは! しかもその生産量は世界第14位、南半球の五大生産地に数えられるという。
「ブラジルというと熱帯、というイメージは必ずしも間違いではありません。ただ、ブラジルは面積が広い国です。北部は熱帯雨林に覆われた地域ですけれど、南部は乾燥して寒い地域となります。この南部で、ヨーロッパからの移民のひとたちがワインをつくりはじめたのです」
そう微笑みながら語ったのは、駐日ブラジル大使館の外交官フェルナンド・ペルジガォンさん。
ブラジルでの本格的なワイン造りは、19世紀にイタリア移民が赤道から離れた南部で始めた。ワイナリーは現在大小合わせ1100、ファインワインをつくっている生産者だけでも150あり、最古のワイナリーは100年以上の歴史を持つ。
「近年、ブラジルでは北東部のように暑い地域でも、特にスパークリングワインの生産が可能になっています。暑い地域に適したブドウの品種改良に成功したのです。ブラジルは世界的にも有数な農産物の研究開発国で、その成果のひとつです」とフェルナンドさんは胸をはる。
ただし、フェルナンドさんが格上ワインとしてオススメするのはスパークリングではなくて、「タレント」という、カベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー30%、タナ20%の赤ワイン。サルトン社はイタリアからやってきたサルトン家の兄弟が1910年に創立した老舗ワイナリーで、ブラジル国内のスパークリングの40%のシェアを占めるそうだけれど、フェルナンドさんはそのスパークリングよりも、同社が2004年に発売したファインワインの「タレント」がお気に入りなのだ。
「イチバンです。サイコーです。ブラジルワインの平均の上だとは思いません。世界中のワインの平均より上。まさしくブラジルの代表的なワインだと思います。(彼らがファインワイン造りに取り組んでから)20年間、積み重ねてきた努力がこのワインには詰まっています」
カベルネ、メルローというからボルドーか、タナというから南仏を思わせるのかというと、さにあらず。アルコールもタンニンも控えめ、爽やかで上品、南国アマゾンどころか、冷涼な地域の赤を思わせる。
これなら、ブラジルを代表する料理、ガウッショ(カウボーイ)発祥といわれるバーベキュー、シュハスコとの相性もよさそうだ。
最初の1杯はカイピリーニャ
「シュハスコといえば、ブラジル人は家族と、または友だちたちと食べる習慣があります。ブラジルでいう家族単位とか友だち単位は、大勢になる場合が多い。私が家族や友人たちとシュハスコをやるとなれば、20〜30人、最低でも10人になります。めでたい日や家族が集まったときにも食べるわけですけれど、ブラジルの特徴は、みんなが集まって、ワインを飲みながら長い時間かけて楽しむことです。昼から夜遅くまで。合わせるワインは赤です。その前にスパークリングをよく飲むわけですけれど、ただし、ブラジルの場合、最初の1杯はカイピリーニャから始まります。ブラジルの伝統的なカクテルで、サトウキビの蒸留酒のカシャッサとライムと砂糖を加えてつくったものです」
カイピリーニャ、スパークリング、赤ワインでワイワイ、昼から夜まで食べ続ける。さすがサンバの国ブラジルである。「タレント」はそういう長時間のどんちゃん騒ぎにも耐えられるクールさを備えている。
課題はブラジルワインの認知度、ブランド力を高めることだろう。
「ワインに関しては、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ウルグアイと協力しあって、地域全体で南米のワインを世界にアピールする。そのほうが大事だと思います」
サッカーではアルゼンチンはライバルですよね。
「彼らはそう思っているみたいですね(笑)」
フェルナンドさんが「イチバン」と称賛する「タレント」。ボサノバをバックミュージックにお試しになると気分かも。