検証10 穴子
姿は鰻に似ているが、脂は軽やかですっきりしている。「すしざんまい」では、骨が当たらないよう小ぶりのものを仕入れる。一度薄味で炊き、塩もしくはツメで供する。検証時は醤油や砂糖を使い、素材の風味を生かすために優しい味わいに仕上げたオリジナルのツメ。
甘辛いツメに赤は間違いではないけれど……
太田 なるほど、これはいい! ワイン単体で味わうより、穴子と合わせることで不思議とアフターに透明感が出ます。
柳 うん、ワインが軽やかに感じますね。
松木 これは「タンニンと脂質の法則」(笑)。抜群まではいかないものの、いいですよ。あと、穴子とワインそれぞれに土っぽい香りという共通項もあります。
柳 甘味のあるツメで食べるタイプだから白ワインはNGだろうと思っていたのですが、穴子って鰻よりも脂が軽やかですよね。だから重さよりシャッキリ感があるワインだとネタとの旋律がきれいに揃う。「クレマンド ブルゴーニュ(04)」が◎でした。
富田 酸のレベルという理由はもちろん、ほかにはドサージュの甘味も関係している。ドライ過ぎても浮いてしまいそうです。
柳 甘辛いツメ=赤ってまずは間違いではない。ただし、ネタの脂のボリューム具合では白泡もアリでした。
穴子に合うワイン
検証11 本マグロあぶりとろ
こちらも赤身同様、「すしざんまい」独自の備蓄によるマグロの大トロ部分を使用。軽く炙ることで脂を落とし、香ばしい香りをまとわせる。また、芽ネギに大根おろし、レモンなどをアクセントとしてプラス。このリッチな味わいとバランスの取れるアイテムを探す。
ジューシーな脂と香ばしさに太刀打ちできるワインは?
紫貴 本当ですね! 合わせていただくと、ワインが持つ和柑橘のようなニュアンスが生きて、ポン酢のよう。炙りのほのかな燻香と脂のジューシーさのアクセントになります。大根おろしと芽ネギが添えてある影響も大きいです。
太田 ワインのオレンジピールっぽい香りが効きますよね。
柳 ルカツィテリの渋みと良い意味でのクセのある感じが、トロの脂の存在感とうまく対峙したうえで、より澄んだ感じで口中に展開してくれる組み合わせ。白ながら、ワインのほのかな渋みが脂を切るのではなく、ほどほどにすっきりさせつつも広げてバランスがいい。
太田 フレーバーだけでなく、ワインの酸のエッジもポイントになっていると思います。
柳 あと、意外性はないですが「シノン(12)」が◎。肉料理と合わせるときのセオリーに近いけれど、やはりタンニンを感じるワインだとハーモニーがキレイ。
松木 ちょっと肉っぽいジューシーさのあるネタだから、やっぱり赤ワインは合わせやすいですよね。「ルカツィテリ」はチャレンジ枠でセレクトしたワインだったのですが、オリとともに熟成させているから生臭さが出ない。しっかり主張のあるオレンジ系って寿司マリアージュのテッパン!
本マグロあぶりとろに合うワイン
検証12 ウニ
とろけるような滑らかな舌触りに深いコク、磯の香とリッチな余韻。唯一無二の個性を持ち、寿司には欠かせないネタ。本日は、小粒ながら色が濃く、甘味が強い北海道産アカウニで検証する。冬ネタ特集時は軍艦で供したが、本日は海苔なしの握りで検証する。
濃厚な磯の香にはアロマティックなワインを重ねる
富田 「パイス(09)」がいいです。フィニッシュまで、風味とテクスチャーのタイミングが合う。
柳 面白い! マセラシオン・カルボニックにより、タンニンが柔らかく抽出されているところがいい。ウニって咀嚼感があまりないから、まろやかさで締めると成功するんですね。口中で展開する時間経過ごとの同調感がポイント。
太田 うん、喉の奥でお茶のような甘味を感じます。
柳 あ、八女茶? 氷で渋みではなく甘味だけ抽出したような。
太田 そうです、マセラシオン・カルボニックとお茶の立て方にまさかの共通点を見た瞬間(笑)。
松木 ネタとのバランスを考えると冷やし気味で美味しいというのもポイント。こういうワインこそお寿司屋さんにぜひ置いてほしいですね。
紫貴 「ヴィオニエ(11)」も抜群! ウニのねっとりとした重量感にワインのリッチな質感と品種由来のアロマティックさが相まって、ベストマッチと呼べるレベルです。
富田 互いの旨みの重量感が一致して、クリーミーさがいっそう際立つ。
柳 めちゃくちゃイイ! あっ、ワインのセレクトは「冬ネタ編」でもウニで◎評価を連発した実績がある太田さん。もう殿堂入り(笑)。
太田 そこはもう、道産子の誇りにかけて狙ってますから(笑)。ウニってオイリーなテクスチャーかつアロマティックな品種のワインをぶつけるとプラスαがある。リッチ過ぎてもNGですが、「ウニ・ヴィオニエ」ぜひお試しあれ!