メーカーズディナーの型
イベントには型というものがある。それは無駄なく洗練され、効率がよい形式だ。ワインのイベントにも型があって、メーカーズディナー(ランチ)といえば、大体こうだ。
1. ワイナリーと畑の説明
まず、座学がある。ほとんどの場合、海外からやってくる栽培家、醸造家、マーケティング担当者などがスライドを使ったりしながら語る。普通は通訳がつく。このときはまだ、ワインや食事は出てこない。ワイナリーと畑の位置、歴史、畑の土壌、栽培方法、醸造方法、商品のラインナップなど、基本情報がまず伝達される
2. 各ワインの説明
つぎに、ワインが1杯注がれる。このとき、ワインに合わせた最初の食事が出る場合も多い。最初のワインは、ワイナリーのラインナップにあれば、スパークリング、ないし白ワインだ。そして、そのワインについての解説がなされる。そのヴィンテージの畑の状況、天候、品種、醸造上での工夫などが語られ、「あまり話が長くなってもいけないから……」などといって、乾杯。1皿目を食べ、ワインを飲みはじめる。多少、食事が進んだところで、あらためて、そのワインになされた工夫や食事とのペアリングなどが語られる。以降、普通は、食事は軽めのものから重めのものへとコースで進むので、ワインも軽いものから、重くて高級なものになってゆく。ワインがグラスに注がれるたび、そのワインについての説明がなされる。
3. サプライズ
メニューには乗っていないサプライズのワインが用意される場合も少なからずある。食事の途中で、そのワイナリーの思い出のワイン、素晴らしいヴィンテージの話がなされると、「それを実際に今日、みなさんと飲もうと持ってきました」というような形で、それが最後の食事の途中にサーブされる場合がある。ここが会のハイライト。このワインのあとは、デザート、コーヒーとなって会は終了する。
このパターンのほか、もうひとつあるのが、立食やビュッフェの気楽な形式。入り口でスパークリングなど、最初の一杯が手渡され、ちょっとしたワイナリーからの説明が入った後は、会場の中央などに、料理とワインが時間の進行とともに置かれてゆく。料理、ワインが入れ替わるタイミングで説明がなされる場合が多いけれど、手短。お客は各自、グラスや皿をもって並び、料理とワインを楽しむ。
メディア向けとなると前者のパターン、一般消費者向けとなると後者のパターンが多い。というのも前者は、メディアとしては情報量が多くて助かるけれど、消費者にしてみれば、いささか情報過多でもある。また、ワイン+レストラン特製のコース料理となるため、どうしても値段が高くつく、時間が長くかかる、服装もある程度フォーマルでなくてはならないなど、気軽ではないため、そうそう多くは開催されづらいのだ。後者はぐっと略式で気軽だ。ただ、情報量は少なくなりがちなため、ワインについてより知りたいなら、大抵の場合、会場にいて、客とおなじように、食事とワインを楽しんでいるワインメーカーに声をかけて話を聞く、積極性が求められる。
さて、長くなったけれど、ここまでは前置きだ。今回はヴィーノハヤシが主催した、イタリアはリグーリア州のワイナリー、bioVio(ビオ・ヴィオ)のメーカーズディナーのことを書きたいのだ。
会場は東京 三軒茶屋駅のすぐそばにあるイタリア料理店「ペペロッソ」。19時半開始で、立食ビュッフェ形式。bioVioからは、マーケティングの担当者、カミッラさんという女性がやってきた。会費は8,000円。上のパターンでいえば後者の気軽なほうに分類される。