住宅のあいだにブドウ畑
次に訪れたのは、勝沼町上岩崎西田という場所。ここに、約6,000平方メートルの小さな畑がある。周囲は住宅が軒を連ねる。もともと自宅兼観光ブドウ園だったところが、放棄地となっていて、それをMGVsワイナリーが購入して再生したそうだ。3年前にブドウ樹を植え、今年、少量の初収穫を予定している。品種は甲州とマスカット・ベーリーA。
MGVsのほかの畑にもいえることだそうだけれど、「秋雨をやり過ごすため」と、独自の工夫で、発芽を遅らせ、収穫も遅く、10月頃を予定している。
生育方法は、「棚でつくるギュイヨ栽培のようなもの」という。身長175cmの筆者の頭のほんの少し上に、針金が碁盤の目のように張り巡らされていて、その碁盤の目を斜めに突っ切るようにブドウが枝を伸ばしている。この碁盤の目を1マスとすると、1マスあたり何房のブドウをならせるか、数量を調整しながら、つねに、4マス分の長さに収まるよう、ブドウの枝を剪定していく。伸びやすい日本のブドウ樹をコントロールし、手元でブドウをならせるのは、簡単なことではないという。ちなみに、4マスで概ね6メートル。
今回、訪れたのは、この2箇所とワイナリー周辺の小規模な畑だったのだけれど、すべての畑で、前述の、遅い栽培、樹勢を強くしすぎないための工夫をさまざまにおこなっている。たとえば、ワイナリー前の畑には、3段の垣根栽培のマスカット・ベーリーAがあって、ここでは、ブドウをならせるのは下の2段のみ。最上段は、樹勢を制御するための段としている。こちらも、2018年に初収穫を予定している。
この畑は、足元も面白い。クローバーが生えているのだ。これはカバークロップ。「日本全国の農地がかかえる問題だとおもうけれど」と前置きして、これが過剰な窒素分を抜くためのものであることを教えてくれた。日本の農地はかつて、肥料を大量に使いすぎた結果、硝酸性窒素が多量に残留している。この畑をふくめ、今回訪れたMGVsの畑は、いわゆる雑草でも、ある程度のこされている。これらもカバークロップとして機能し、窒素分を減らし、樹勢を弱めることを狙いのひとつにしている。