CAVE DE GAMIN et HANARÉの巻
炭火で焼いた短角牛のステーキに、野性のセリと一度炊いたエビイモを揚げた特製フライドポテトを添え、和のテイストをアップ。大根おろしと黄身ポン酢のソースは、大粒のオーストラリア産マスタードがアクセントに。
よりオレゴンらしい骨格を
短角牛のステーキで
「オレゴンはわりとピノ・ノワール向きかも?」から「オレゴンこそがピノ・ノワールの聖地!」と世界の認識を20世紀末に改めさせ、“オレ・ピノ”なる呼称まで生まれた。もし、メゾン・ジョセフ・ドルーアン、ボーヌに拠点を置くネゴシアンでありドメーヌであるこのメゾンが1987年にオレゴンに進出していなければ、こんな変革は起きなかった。
3代目のロベール・ドルーアンは、ワイン・コンクールで上位争いに顔を出すオレゴン産ワインに興味を抱き、醸造家志望の娘をオレゴンへ派遣、ワイナリー「ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン」の設立とあいなったのである。
2018年早々に来日したドメーヌ・ドルーアンの取締役デヴィッド・ミルマンが「カーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ」で紹介したのは、初リリースの「ローズロック ピノ・ノワール2014」だった。35区画の畑から手摘み収穫されたブドウを厳選したスペシャル・キュヴェだ。ワイナリー創立以来、ブルゴーニュのエレガンス路線を目指したダンディー・ヒルズAVAのワインと比べ、エオラ=アミティ・ヒルズAVAで造るローズロックは、よりオレゴンらしい骨格を追求したという。

ステーキの旨みはもちろん後を引くが、大根おろしのソースもアッサリとしながら長い余韻を楽しめる。「だから、パワーだけで勝負しないローズロックのやわらかい余韻とバランスがとれる」との点で、デヴィッド(左)とソムリエ佐藤の意見は一致。
ローズロックという名前は、「イメージ先行ですよ。覚えやすい語呂で、美しいラベルになりそうな名前をファミリー内で相談しまして」とデヴィッドはこともなげに語るが、テイスティングすれば、これ以外の名前はちょっと思いつかない。薔薇の花びらのように幾重にも広がる香りと岩のミネラル感を併せ持ったピノ・ノワールだからだ。
「30年は寝かせられるポテンシャルを持つ」とデヴィッドが語ると、「抜栓しても日持ちするワインですよ」とソムリエの佐藤尊紀が続ける。
「開けたてはエレガントでフルーティ、でも数日経つとまるでジュヴレ・シャンベルタンのよう。抜栓して1日目のローズロックと3日目のローズロック、両方用意してお客様へグラスでそれぞれサービスしたいくらいです(笑)」
目の前に運ばれた赤身の短角牛ステーキをローズロックとともに味わったデヴィッドは、「良質な畑から良質な熟成ワインが造られるのと同様、良質なビーフは良質なドライエイジングによって生まれる。このステーキは肉の味が丸みを帯びていて、丸い味のローズロックにフィットするのも素晴らしい!」と佐藤のチョイスによるひと皿に満足げな表情を見せた。