特別なアポイント
去年9月初旬、ボルドーのシャトーを巡る視察の旅に出かけた。
収穫の直前であり、ブドウの生育を確認する絶妙なタイミングでもあった。サンテステフからソーテルヌ、川向うのポムロールやサンテミリオンを含む延べ30のシャトーを訪問するのは至難の業だ。
今回はリムジンをチャーターして、ボルドー市内を含め7日間の日程でボルドーの丘を駆け巡った。
また、ホテルジャーナリストとしてホテルの取材も兼ねて、この地域を代表する珠玉の3軒を最後に紹介したい。
各シャトーのテイスティングを含む視察を可能とするアポイント取得は難しく、5大シャトーとなれば更にハードルは高くなる。結果としてオー・ブリオンだけは日程が合わず断念。逆にシャトーを修復中であったカロンセギュールは、工事中にもかかわらず視察が実現した。
ここで言う“アポイント”とは、安易なグループ見学ではなく、PRマネージャー、ディレクター、醸造所長クラスがワイン製造の全工程を案内し、最後に数種類のテイスティングという特別のものだ。とくにラグランジュ
では事実上のトップ、副会長の椎名敬一氏に直々ご案内を頂いた事に感謝したい。
今回の旅で改めて痛感したのはテロワールとサヴォアフェールの重要性である。
テロワールとは、ブドウが育つための環境である土地、気候、土壌の質、斜面の起伏など、畑を取り巻く全ての自然環境の特徴。また、サヴォアフェールは、ブドウ栽培と醸造の、技術、経験、そして独創的な発想がブレンドされた、ノウハウの総称。それらを理解した上で、シャトーの歴史、伝統、文化などを加味して楽しんで頂きたい。