王さまの地はアペラシオン天国だ!
ワインの世界では、ボルドーワインが「女王」であるのに対し、ブルゴーニュは「王さま」と呼ばれている。
パリから鉄道や車で2時間移動すれば、もうそこは“王さま”の地。日帰りも可能な距離なブルゴーニュは、ワイン観光に最高のエリアだ。北のシャブリから南のマコネまで、約230km。パリをはじめとする北の街とローヌの河口を結ぶルートとして、古代から人々が行き交ってきた。今日では、細く長く連なるブルゴーニュを制覇すべく、自転車で全距離を駆け抜けるタフなワイン・ラバーの姿も。
もし車で縦断するにしても、できるだけ徒歩で周る時間を作り、「クリマ」と呼ばれる区画ごとに管理されている景観を間近で眺めてみたい。銘醸地を多数含むコート・ドール地区は2015年、主要な市街地とともにユネスコ世界遺産に認定され、さらに観光客を集めつつある。
とてつもなく有名な産地ながら、畑の総面積は約2.8万ヘクタールと、じつはフランス全体の畑面積の3%ほどにとどまる。
だからこそ、どの畑も広すぎることなく、人の目と手が行き届く。
そして、アペラシオンの数が100にまで到達しているのも、ブルゴーニュならではの特長だ。こちらはフランスワイン全体の20%を占めているのだから、面積に対するアペラシオンの多さが際立ってくる。
念のために、アペラシオンとは、主にフランスにおける法律に基づいたワインの産地を示す呼称のこと。同じ造り手のワインでも、アペラシオンの面積が小さくなるほどお値段は上がっていくのがお約束。優れたブドウを産出すると認められた一部の畑はグラン・クリュ(特級)、プルミエ・クリュ(一級)にランク付けされている点も覚えておこう。
なぜアペラシオンが細かく分かれていたり、畑がランク付けされていたりするのだろう?
それは、例外を除き、ブルゴーニュでは2種類以上の品種をブレンドせず単一品種で勝負してきたから。同じ品種で飲み比べたとき、産地や畑の違いはクッキリ現れる。
では、ブルゴーニュの代表的なブドウ品種といえば?
正答率が高そうな答は、赤がピノ・ノワール、白がシャルドネだ。
この2種類で全生産量の80%以上を占める。ほか、ヌーヴォーでお馴染みボージョレーをはじめブルゴーニュ南部で栽培されているのが、赤のガメイ種。やはり南部のブーズロンで村名アペラシオンのワインに使用されるのは、白のアリゴテ種。どちらもピノ・ノワールやシャルドネと並び、ブルゴーニュに古くから伝えられてきたブドウだ。
と同時に、産地ごとに共通するキャラクターも見出しやすい。さらに、畑の所有者が代替わりするたび相続の分割が進んできた背景もあって、ブルゴーニュはアペラシオン天国となったわけだ。
ただし、一度「このアペラシオンは自分の好みじゃない」と感じても、別の造り手のワインに挑戦して「あれっ? 案外イケる!」となる可能性は大いにある。最近は、とくにマイナー産地で野心的な醸造家がユニークな造りに挑戦するパターンも増えてきた。今回、知名度の高くないブルゴーニュのアペラシオンに注目する理由のひとつが、そこにある。
以上の基本をおさえた上で、伸び盛りの「これから来そう」なブルゴーニュワインを探しに都内の人気ワインショップ巡りに出かけましょう!