世界でわずか600本のクリスタル
エノテカが12月から販売を開始し、すぐさま完売となった「クリスタル・ヴィノテック 1995」、そして「クリスタル・ロゼ・ヴィノテック 1995」。前者は世界でたった450本、後者は150本しかないシャンパンだ。WINE-WHAT!?がボトルの半分くらいを、この記事をつくるにあたって、「とうふ屋うかい」でのお披露目会で飲んでしまったので、残っているのは449本と149本かもしれない。価格も飛び抜けて高い。リードにも記載したように、12万円と24万円だ。
「クリスタル」と名がつくことからおわかりのとおり、この2つの商品は、1776年設立の老舗シャンパンメゾン、ルイ・ロデレールがうみだす「クリスタル」のひとつ。高級シャンパンで知られる「クリスタル」にあっても「ヴィノテック」は最上級にして最高級のキュヴェだ。1876年に、ロシア皇帝アレクサンドル2世のリクエストでうまれ、クリスタル製のボトルに入れられたことにその名が由来するという「クリスタル」。現在の「クリスタル」も、そのデザインを踏襲している。
名だたるシャンパーニュの高級メゾンを向こうにまわして、しばしば専門家たちから最大の好評価をうけるシャンパンのひとつ、という高い品質と、希少性が「クリスタル」の高価格のおもたる理由だ。
広大な畑を所有するシャンパンメゾン
ルイ・ロデレールは、シャンパーニュではめずらしく、広大な自社畑を所有している。モンターニュ・ド・ランス、コート・デ・ブラン、ヴァレ・ド・ラマルヌの3地方に、200ha以上の畑をもつのは、シャンパーニュのネゴシアン・マニピュランとしては最大。ルイ・ロデレールでは、使用するブドウの75%から80%がこの自社畑のブドウだ。
さらに「土壌は石灰質の土壌が多く、それが独特のフィネス・繊細さをうむ」と語るのが、ルイ・ロデレールの副社長にして、ブドウの栽培ディレクターをつとめ、醸造最高責任者でもある、ジャン・バティスト・レカイヨン。畑は45区画にわかれ、伝統的な手作業でのシャンパン造りをおこなう。また、ルイ・ロデレールは、ブドウ栽培において17年前からビオ・ディナミ農法を開始していて、いまでは畑の85%がビオ・ディナミ認証を取得しているという。
ルイ・ロデレールの副社長にして、ブドウの栽培ディレクターであり、醸造最高責任者でもある、ジャン・バティスト・レカイヨン氏。上述の「とうふ屋うかい」の一室にもうけられたディスプレイ前で。
樹は、良質な樹を選んで増やすマサル・セレクションをおこなった、ルイ・ロデレール独自のピノ・ノワールとシャルドネ。シャンパン造りにつかわれる樹の樹齢は25年以上だ。
「25年より若いとピノ・ノワールらしさシャルドネらしさが出すぎる。25年以上だと、塩分を含んだ土壌、石灰の土壌のノートが出る。それが古樹をつかう理由だ。ルイ・ロデレールではシャンパンに力強さは求めていない。求めるのはミネラル、フレッシュさ、エレガンス。食事によく合い、グラスのなかで、さらなるエレガンスを発揮するシャンパンがクリスタルだ」というのだ。