仮説と実験方法
一般的には「大きいサイズのボトルほど熟成がゆっくりで長期貯蔵に向く(小さいサイズのボトルほど早く熟成する)」と言われている。
この定説通りであれば、750mlボトルはマグナムに比べて熟成が進んで早いうちから楽しむことができ、マグナムの飲み頃のピークは遅くなると仮定できる。今回は、つまりその仮説を検証する実験だ。
750mlボトルとマグナム、サイズ違いの同一ヴィンテージワインを15種類用意し、その味わいの違いをフィラディスの社員総出でテイスティング。
用意したワインは、泡1種類、白2種類、ブルゴーニュ赤4種類、ボルドー赤6種類、イタリア赤2種類の計15種類、31アイテム。最初に5種類をブラインドでテイスティングして検証し、残りの10種類はオープンで検証した。
歴然とした違いはない!?
最初に行ったブラインドテイスティングでは、5本中2本については、ほぼ全員が750mlボトルの方が熟成していると答えたが、一本はほとんど差がなく、1本は逆に全員がマグナムの方がより熟成していると答えた。
必ずしも仮説通りとは言えない結果だ。実際には非常に判断が難しいテイスティングで、熟成度合いの違いは明確にできなかったという。それはオープンテイスティングのワインも同様で、味わいに違いはあれど、熟成のスピード・度合いに関しては750mlボトルとマグナムに歴然とした差は感じられなかったそうだ。
一番違いが出るのは「果実味」
しかし、オープンテイスティングでじっくりと違いを検証していくと、特に違いが感じられる要素が明らかになってきたとレポートしている。検証の結果、最も違いが表れたのは「果実味」。マグナムの方が瑞々しく生き生きとした印象で、奥にしっかりとした強さが感じられたという。
特に酸やタンニンにおいては、マグナムの方が熟成のニュアンスを感じるものもあったそうだが、これは、果実味の厚みの大小が酸・タンニンの感じ方に影響を与えたのだろうと分析している。つまり、マグナムの方が若々しい酸と力強いタンニンを持っているものの、豊かな果実感がそれらを包み込んで目立たなくさせた。逆に、750mlボトルは酸やタンニンが柔らかな質感に変化しているものの、落ち着きつつある果実味とのバランスによっては、酸・タンニンの方が目立ったのではないかと。
総括:ワインを選ぶ際には、ボトルサイズも検討項目に
このレポート、総括ではこう締めくくっている。
果実味のポテンシャルを考えると、長期熟成に向くのはやはりマグナムだ。ワインの状態に関しても、マグナムは果実味がしっかりしているため全体的に安定感を感じる。ただ、その果実味の強さ故か、ワインによっては750mlボトルの方が開いていて美味しいと感じられるものもあり、それぞれの『飲み頃のピーク』は異なる。
しかし、大雑把には、小さいボトルの方が熟成が早いという仮説は間違っていない。750mlボトルを開けてみて落ち気味だと感じるのであればマグナムでは飲み頃を迎えている可能性が高いし、まだ若いと感じるならばハーフボトルこそ最適かもしれない。ワインを選ぶ際に、ヴィンテージや熟成させたい年数に応じてボトルサイズも検討項目に加えることによって、より美味しくバラエティ豊かなワインリストができると結んでいる。
実験の詳細レポートはこちらから
http://www.firadis.co.jp/newsletter/201708