カバー・クロップのいろいろな使い道
「ジンファンデルのゴッド・ファーザー」と呼ばれる、「レイヴェンスウッド・ワイナリー」のジョエル・ピーターソンさん。
1888年に植えられたジンファンデルの区画を案内しながら、「よい畑ほど美しくはないものさ」と曰う。
たしかに畝間には草がぼうぼう。もちろん、これらの植物はカバー・クロップであり、考えがあって生やしっぱなしにしているのだ。
「今年みたいに雨が多い場合はカバー・クロップの蒸散作用で土の中の水を抜いたほうがいい。反対に干ばつの年には水分を保つために、カバー・クロップを早めにすき込んで土に混ぜる。カバー・クロップにはいろいろな使い道があるね」
このジンファンデルの古木も、ジョエルさんが手にいれるまでは化学薬品のせいで、すっかり生命力を失っていたそうだ。
そこでまず、がちがちに固まっていた土を掘り返し、次に1ヘクタールあたり5トンの堆肥を施した。そしてライ麦や大根などのカバー・クロップを植えて土壌の流亡を防ぐと同時に、それをすき込んで養分にしたところ、ブドウの樹が若返ったという。
またこのジンファンデルのすぐ横には、ジョエルさんが発見した、カリフォルニアでは絶滅しつつある珍しい品種も栽培されている。
南西フランスの品種とされるカステやサヴォワの品種であるモンドゥーズ、それにグルナッシュの古いクローンなど。
それらのブドウの樹をよく見ると、針金の先に妙なものが刺さっている。
その正体はアイリッシュ・スプリングというブランドの石鹸だった。マタンザス・クリークのラベンダーと同じ理由で、鹿がこの臭いを嫌い、寄り付かなくなるそうだ。
まさにブドウが収穫された畑を前に、2014年のベッドロック・ジンファンデルがグラスに注がれた。ジンファンデルというとジャムのように濃厚で重たいワインを想像しがちだが、このワインはきれいな酸味がフレッシュさを誘う。じつに調和のとれた味わいであった。